研究課題
自然免疫関連受容体であるNLRP3は、リソソームの損傷に応じて情報伝達因子ASCおよびプロテアーゼCaspase-1と共にNLRP3インフラマソームを形成し、サイトカインIL-1betaやIL-18の産生を介して炎症を惹起する。尿酸塩結晶やシリカナノ粒子などの刺激物によるNLRP3インフラマソームの過度の活性化は痛風や塵肺などの炎症性疾患の発症要因となるため、NLRP3インフラマソームの活性化を阻害する化合物の同定は重要な研究課題である。我々は、化合物ライブラリーを用いたスクリーニングを行い、痛風治療薬であるコルヒチンがNLRP3インフラマソームの活性化を抑制することを見出した。微小管は尿酸塩結晶などの刺激に応じて小胞体とミトコンドリアの近接を促進することにより、小胞体上のNLRP3とミトコンドリア上のASCの会合を誘導する。尿酸塩結晶などの刺激は、ミトコンドリアの損傷を惹起するため、細胞内NADが減少してNAD依存性のアルファチューブリン脱アセチル化酵素であるSIRT2の活性が低下する。SIRT2の活性低下はアセチル化微小管を蓄積させる。アセチル化微小管は小胞体とミトコンドリアの近接頻度を高めるため、NLRP3インフラマソームの会合が促進される。コルヒチンなどのチューブリン重合阻害剤は、微小管依存的なNLRP3インフラマソームの会合を抑制する。また、フィトケミカルであるレスベラトロールは、詳細なメカニズムは現段階では不明であるが、アセチル化微小管の増加を抑制することにより、NLRP3インフラマソームの会合を抑制する。これらの解析結果は、微小管がNLRP3インフラマソームの阻害剤を開発する上での有力な創薬標的であることを示している。
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