我々はこれまでに、シリアンハムスターの冬眠時の腸粘膜上皮の細胞更新が著しく遅滞することを観察した。本研究ではその分子機序に関する情報を得ることを目的とした。まず、二種類のチミジンアナログを用いた二重標識法による陰窩-絨毛軸に沿った腸上皮細胞の移動速度の推定法を確立し、覚醒および冬眠個体の細胞移動速度をそれぞれ5.9±0.6および0.9±0.2 μm/hと推定した。免疫組織化学とRT-qPCRの結果、Wnt/βカテニン経路とIhhシグナルのいずれも細胞更新遅滞に関与しないと考えられた。ハムスターの小腸上皮オルガノイド培養に成功し、これを用いて腸上皮細胞更新の制御因子の探索が可能になった。
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