研究概要 |
EBウイルス(EBV)感染により血球貪食性リンパ組織球症を発症するXIAP(X-linked inhibitor of apoptosis)欠損症の患者2名よりインフォームドコンセントを取得し、骨髄細胞を採取した。これよりCD34+造血幹細胞をポジティブセレクション法により分離し、それぞれの患者由来の幹細胞をもちいて3頭ずつのNOGマウスに移植した。移植後6-8ヶ月の時点でこれらのヒト化マウスの末梢血中ヒト細胞の割合は0-40%で、個体により大きな違いが認められた。フローサイトメトリーによりCD19+, CD3+, CD4+, CD8+の細胞が認められ、B細胞とT細胞がともに分化していることが確かめられた。それぞれの患者由来の3頭のマウスのうち2頭にEBV(約1,000 50% transforming dose)を接種したところ、そのうち2頭のマウスで感染後10週以降に末梢血中EBV DNA量が1×10E+4レベルまで上昇し、感染が確認された。これらの結果は、XIAP欠損症患者の骨髄由来造血幹細胞をもちいてヒト化マウスを作成することが可能であること、このマウスではT細胞とB細胞の分化が認められること、またEBVが感染しうることを示しており、当該疾患の病態をマウスで再現するという当初の目的を達成することが可能であることが強く示唆された。今後はさらに、EBV感染マウスをウイルス学的、病理学的、免疫学的に解析し、血中ヒトサイトカインレベルや血球貪食像の有無について検討を加える予定である。
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