研究課題
研究代表者らは腸間膜に代表される脂肪組織中にIL-5やIL-13に代表される2型サイトカインを大量に産生する能力を持った新たな自然リンパ球を発見し、ナチュラルヘルパー(natural helper: NH)細胞と命名した。本研究では、脂肪組織におけるNH細胞の役割、それに関連してNH細胞とマクロファージや好酸球との関わりを検討した。すべてのリンパ球を欠損するγc-/-Rag2-/-マウスは高脂肪食負荷条件下でも体重増加が抑制される。このマウスにおいては脂肪組織中に好酸球はほとんどみられず、またマクロファージはほとんどが抗炎症型の M2マクロファージであった。NK細胞を欠損するマウスでは体重増加の抑制は観察されなかった。興味深いことにIL-7-/-マウスでは高脂肪食負荷条件下で体重増加が観察された。IL-7-/-マウスでは腸間膜のNH細胞の分化はみられないが腸管粘膜固有層にはNH細胞が分化することから、腸管粘膜固有層のNH細胞の関与を検討した。その結果、γc-/-Rag2-/-マウスに腸間膜由来のNH細胞を移植しても体重増加はみられなかったが、腸管粘膜固有層から単離したNH細胞を移植することで体重増加が回復した。この時に脂肪組織中の好酸球や炎症型の M1マクロファージが増加していた。興味深いことに、試験管内でNH細胞とマクロファージを共培養するとM2マクロファージが増加する。NH細胞からの2型サイトカイン産生を誘導するIL-25やIL-33の欠損マウスに高脂肪食負荷を行ったところ、欠損マウスとヘテロマウスとの間に差はみられなかった。一般的には、2型サイトカインは抗炎症性の反応を誘導すると考えられるが、本研究で得られた結果は、腸管粘膜固有層のNH細胞が2型サイトカインとは別の経路で体重増加や脂肪組織炎症を誘導する可能性を示唆する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 9件)
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