研究課題
挑戦的萌芽研究
我々はWNKキナーゼ-OSR1/SPAKキナーゼ-NaCl共輸送体というシグナル系が腎臓に存在し、その亢進が塩分感受性高血圧症を(Cell Metab 2007)、その阻害が低血圧症を(Hum Mol Genet 2009)引き起こすことを報告した。またNCC以外にも、OSR1/SPAK下流には、腎臓でのNKCC2輸送体を介したNaCl出納調節と、血管平滑筋でのNKCC1を介した血管トーヌスの調節があり、この系の阻害剤は今までにない作用機序の降圧薬として期待される。本研究では、このカスケードの中心低役割を演じているSPAKに対する直接阻害薬のスクリーニングを行う。25年度中には、ELISAによるスクリーニング系を立ち上げ、その細かい条件制定を終了し、医科歯科大学所蔵のケミカルライブラリー2万種のスクリーニングを終了し、いくつかのシード化合物を得ることができた。それらの、細胞系での機能確認も終了し、いくつかは細胞においてもある程度の毒性は示すものの、SPAKにたいする阻害効果が確認され、動物(マウス)への投与を行い、下流のNCC,NKCC1のリン酸化が、短期的には阻害されることが判明した。今後は、誘導体展開を行い、毒性の低下と効果の持続を目指す。
2: おおむね順調に進展している
再現性と感度のよいELISAによるスクリーニング系を立ち上げることができ、それを用いて2万種の化合物スクリーニングを終了し、細胞レベル、動物レベルで有望なリード化合物を得ることができた点で、研究の進捗度は順調と思われる。今後は、誘導体展開を積極的にすすめて、実用可能な薬剤への開発へと進む。
得られたリード化合物については、SPAK以外の多種のキナーゼを用いたプロファイリングを行い、その特異性を評価する。また、キナーゼの阻害様式の検討も並行して行う。誘導体展開を行った化合物は、ELISAの系でスクリーニングし、リードを越える親和性を見いだせたものについては、培養細胞系の評価に進み、そこでの毒性評価が許容できると判断されれば、動物(マウス)への投与を行い、血圧や腎臓でのNaCl排泄、NCCのリン酸化に対する効果を検証する。我々は、WNK-OSR1/SPAK-NCCが恒常的に活性化したヒト偽性アルドステロン症II型モデルWNKD561Aノックインマウスを保有しており、野生型マウスとともに使用することで、生体内でのSPAKキナーゼ活性阻害効果をより鋭敏に判定できると思われる。これらのアプローチによりえられた候補化合物の構造的な共通性を検討し、構造生物学的によりよい薬剤の可能性をシミュレーションし、今後の化学物合成の戦略を練る。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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