研究課題
挑戦的萌芽研究
インフルエンザの重症化は、血管透過性亢進による末梢循環不全・多臓器不全を伴う。そのため重症化に先立って生体が発信する危険信号を「Flu Alarmin」として、患者検体とモデル動物でAlarminの検索と重症化との因果関係を検証した。Flu Alarminとして、①感染気道上皮細胞が放出する物質群、②血管内皮細胞とその周囲組織が放出する物質群、③臓器の代謝不全シグナル物質群を検索した。平成25年度のインフルエンザシーズンでは重症化する患者が稀で検体収集が十分でなかったことから、解析は主に重症化し易い離乳直後の4週齢B6マウスを用いたモデル動物実験で実施された。インフルエンザウイルス株の中でもマウスが重症化しやすいPR/8/34(H1N1)株を用いて実施された。インフルエンザ感染後、ウイルスは3-4日をピークに増加して7-9日で肺から消失するが、血管内皮の透過性亢進と多臓器不全は感染後7日目以後に明確となった。この代謝不全を伴う重症化に先立つ早期の体内代謝の変化では、感染3日から肺、その他の臓器で急速に増加するPyruvate Dehudrogenase Kinase 4 (PDK4)が見出され、この増加に伴ってPyruvate Dehudrogenase が低下して、エネルギー代謝不全が発生していることが判明した。生体が発信する危険信号「Flu Alarmin」としてPDK4が抹消血でも増加するかを、今後調査する。これらの体内代謝不全に先立って感染初期に観察されるFlu Alarminの候補に、肺、気道分泌液中のサイトカイン、TNF-alpha、IL-6、IL-1beta、IFN-alpha、IFN-beta、IFN-gamma、の急速な増加が認められ、Flu Alarminと同定された。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度のインフルエンザシーズンは流行が軽度で重症化した患者検体の収集が困難であったが、感染モデルマウスを用いた実験は順調に進展して、「Flu Alarmin」の候補としてのバイオマーカーの同定が行われて、一定の成果がでた。今後これらの、「Flu Alarmin」バイオマーカーと発症機序との因果関係の解析が可能になったことは、今後に繋がる成果として評価できる。
今後の研究は、血管透過性亢進による末梢循環不全・多臓器不全の発症に関して以下の3課題に絞って進める。1)感染モデル動物を用いた、さらなる「Flu Alarmin」の候補の検索。2)インフルエンザの感染者の血液検体、気道分泌液検体を用いた「Flu Alarmin」の候補の検索。3)「Flu Alarmin」バイオマーカーと末梢循環不全・多臓器不全の因果関係に絞った重点的解析。
予定していた感染動物実験が、感染動物舎が満室状態となって感染動物実験の時期を遅らせて実施しなければならなくなったたため、マウス購入予定にしていた経費が残額として残った。平成26年度の5月までに、感染動物舎への入荷が可能となることから、速やかに予定のマウスを購入して実験を実施する。
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