研究課題
本研究では、リンパ球を用いた細胞治療による新しい免疫抑制法を探求するための基礎的研究を遂行し、本年度は以下の成果が得られた。マウスにドナー由来のリンパ球を用いた細胞治療を行い、MAPKs阻害剤を同時期に投与することで、抗原特異的なCD4+CD25+Foxp3+ T細胞が生体内で高率に誘導され、移植心アログラフトの生着期間は著明に延長し、強力な免疫抑制作用が得られることが判明した。また、マウス心移植モデルにおいて既存免疫抑制剤の細胞治療に対する影響を検討した。ドナー由来リンパ球による細胞治療にNF-κB阻害を併用すると免疫寛容が誘導され移植心は長期生着したが、カルシニューリン阻害剤を細胞治療と同時に投与開始すると制御性T細胞の増殖は阻害され免疫寛容は誘導されなかった。一方、カルシニューリン阻害剤を心移植後に開始するとエフェクター細胞が有効に抑制され、より免疫寛容が効率に誘導されることが分かった。昨年度の研究で、ヒト末梢血単核球をアロ抗原で刺激し抗CD80抗体+CD86抗体下に培養すると、抗原に対し比較的特異的な抑制性リンパ球が誘導されることを示したが、本年度は、これら誘導細胞の中で免疫抑制作用を発揮している細胞を同定すべく研究を実施した。誘導リンパ球からCD3+ T細胞を除去すると免疫抑制能は完全に失われ、CD3+ T細胞の再添加で抑制能は復した。B細胞、単球、NK細胞や樹状細胞の除去では免疫抑制能は保たれた。T細胞の中でCD4+CD25+Foxp3+やCD127loFoxp3+細胞等のCTLA4を発現する制御性T細胞の他、 IL-10産生性CD4+CD8+ T細胞が著増していた。これにより、抗CD 80抗体/抗CD 86抗体を用い誘導される免疫寛容誘導細胞はT細胞であり、機能分子としてCTLA4及びIL-10が関与している可能性が示された。
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