研究課題
世界規模での食のグローバル化は、急激な勢いで拡大している。日本の食料自給率はカロリーベースで40%を下回る現状が続き、輸入食品の依存度が増している。そのような現状のなかで、輸入食品に対する安全性の対策は十分とはいえず、消費者の食に対する不信感を減らすことができないことは由々しき事態であると考える。年々、消費者の「食の安全」に対する関心は高まり、食品を提供する側にとっては最も真剣に取り組むべき課題ともなっている。日本は周囲を海で囲まれているために水産資源が豊富にあり、他国と比較しても魚食文化が古くから発展してきた。一方で、水産業が抱える様々な問題から、日本の魚介類の自給率は低下傾向にあり、現在ではカロリーベースで60%程度である。そのような状況下で輸入魚介類の出所を調べてみると、地政学的な条件からもアジア諸国、特に東南アジア地域からの輸入が多くなっている。そこで、日本における魚介類の食中毒に対する安全性を確保するために、生産場所である東南アジア地域のフィールドワークを通して、魚介類の生産、流通等に関する現状を把握し、さらに現地での魚介類の食中毒菌による汚染状況を明らかにすることにした。これまでの研究成果で、統計資料などから日本における輸入魚介類の実態を把握し、その主な生産現場である東南アジアでのフィールドワークを開始した。また東南アジア各国(タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム)の共同研究者と現地での魚介類の生産、流通、消費に至る各段階での現状と取り扱われる魚介類の細菌汚染の実態について細菌学的な手法により、食中毒リスクを評価した。また各地で分離される食中毒菌の遺伝学的および血清学的な特徴を明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
これまでに実施した研究で、日本における輸入魚介類の取扱の現状について、各種統計資料から実態把握に努めた。またそれら輸入魚介類を取り扱う国内の現場で、視察および意見交換を行い、現場レベルでの状況を理解した。さらに輸入魚介類の主な出所の地域である東南アジア各国にて、それら魚介類の生産現場、流通実態さらには消費に至る流れを調査し、魚介類の取扱段階における食品衛生の現状を総合的に把握した。東南アジア各国の魚介類の生産現場で流行する食中毒病原体について、各国の共同研究者達と一緒に分離および解析を実施している。また食品からの食中毒病原体の分離に必要な分離方法についての開発も実施し、これまでよりも効率良く分離が行えるように取り組んでいる。さらに分離された食中毒病原体について、詳細な遺伝学的および血清学的な解析を実施し、食品の生産現場周辺で流行している菌の特徴を明らかにしている。
今後は日本国内で流通している輸入魚介類について、その食中毒病原体による汚染の実態を明らかにする。そして様々な魚種、様々な生産場所での特徴を明らかにして、それらの傾向から食中毒病原体の流行状況の把握と予測に至るプロセスにつなげることを考えている。また継続して東南アジア各国での食中毒病原体の流行状況を把握し、今後、日本に持ち込まれるであろう魚介類媒介性食中毒病原体のリスク管理に役立てる方向で進めることを考えている。
所属機関の異動による研究環境の変化から若干の研究計画の変更があった。本年度においては、東南アジア地域におけるフィールドワークを通して、現地での魚介類の生産、流通および消費に至る経路の実態把握に努めた。また東南アジア各国にて、食中毒病原体による魚介類汚染の実態を把握するために、現地での実験を実施したが、食中毒病原体の検出効率を向上させる必要があったために、その方法の開発にも取り組んだ。
次年度以降も、継続して東南アジア各国の現場にて魚介類の生産、流通および消費に至る実態把握を実施する。発展途上国では先進国のように魚介類の生産の各段階での管理が厳密に実施されていないことから、できるだけ多くの現場での実態を把握することを心がけ、東南アジア地域における魚介類の取扱の現場での食品衛生の全体像の把握に努める。さらに東南アジア各国での魚介類の食中毒病原体による汚染状況の調査を継続する。必要に応じて、現地研究者に研究実施を依頼し、データ蓄積に努める。またその段階で分離された食中毒病原体について、詳細な遺伝学的および血清学的な特徴を明らかにし、現地での病原体の流行状況を明らかにする。また日本国内で流通している輸入魚介類について引き続き市場調査を実施し、魚介類を汚染する食中毒病原体の汚染実態および分離された菌の特徴づけを実施し、魚介類の安全性確保に向けた情報基盤の確立を計画している。
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