研究課題
世界規模での食のグローバル化により、日本への輸入食品が増え続ける一方で、それに対する安全性対策の整備は遅れている。このような現状の今日、輸入食品による健康被害の報告は相次ぎ、それ対する事件は大きく報道され、消費者の大きな関心事となっている。そのようなことから、広く一般消費者に対して、食品の安全性を担保する情報の整備は急務の課題と考える。そこで、魚介類、特に輸入魚介類がもたらす細菌性食中毒のリスクに着目し、それによる健康被害を未然に防ぐ対策へと繋げることを目的とする。まず日本の輸入魚介類の現状を把握するために、公的機関及び様々な機関より公表された統計資料及び市場の実態調査を実施した。そこから魚介類の自給率は60%程度にとどまっていることを把握し、その出所では特に東南アジア地域が多いことから、それら地域の重要性が明らかとなった。次に、それら地域での魚介類の生産状況を調べるために、東南アジア地域でのフィールドワークを実施し、現地調査を行った。そして日本を含む世界各国に輸出される魚介類の取扱、流通及び小売りなどの状況を調べ、現在の流通の特徴や傾向を分析した。また同時にそれら現場での魚介類取扱の衛生環境の調査を実施した。食品の食中毒菌汚染を検出するシステムの構築は、食の安全安心に繋がる重要な事項である。しかしそれは微生物という特性から汚染の状況を精確に把握することは難しい。そこで、生食で食べられることの多い魚介類を中心として、各種の食品を汚染する食中毒菌の迅速高感度、さらに簡便さも兼ね備えた検出システムの構築に取り組んだ。発展途上国でも実施可能なマルチプレックスPCR法を採用し、実験室で条件検討及びシステムの構築を行った。そして、実際の発展途上国のフィールド、ここではタイ南部でその実用性を評価した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに魚介類の各種統計情報を調査し、日本の魚介類の生産状況及び輸入魚介類の現状把握を行った。そして輸入魚介類の出所である東南アジア諸国での魚介類の生産状況や統計情報、さらには生産現場及び加工現場について調査を継続して実施している。また、魚介類の安全性確保に向けて、細菌汚染の実態を明らかにするために、新たな食中毒菌の遺伝子検査法の開発に取り組んだ。そして、魚介類の食中毒菌汚染が多発するタイ南部にて、その方法の実用性を評価している。
今後は、日本及び世界規模での魚介類の安全性確保につなげる目的から、本研究課題で新たに開発した迅速遺伝子検査法を採用した魚介類の食中毒菌汚染の検出システムを実際のフィールドで使用し、様々な条件下でも、精確な結果が得られるように検討する。次に、東南アジア諸国にて、国際共同研究で実施している各種食中毒菌の食品汚染の事態把握と検出系の開発に取り組み、生産及び加工の現場で実際に使用できるシステムの構築を目指す。そうすることで、本研究課題で目指してきた世界規模での魚介類の安全性確保につながると考えている。
本務先の機関の教育及び運営業務が多忙なことから、構築した食品からの食中毒菌汚染を検出システムの現場(ここでは、東南アジア地域のフィールド)での使用が1カ所のみとなった。本来は、グローバルなシステムを目指していることから、少なくとも東南アジア地域の各国で実施して評価する方が好ましい。次年度以降、さらにこのシステムの評価を国内の実験室内と海外のフィールドで展開する予定である。
本研究課題で食品からの食中毒菌の迅速高感度簡便な検出システムの構築に取り組んでいる。昨年度までに実験室レベルでの検出システムの構築に成功し、海外のフィールド、1カ所で使用して評価を行った。本来、グローバルなシステムの構築を目指していることから、東南アジア各国での実施を考えている。その実施のために、各国の事情にあわせた実験消耗品の調達し、それらを使用した多地域での実施を計画している。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
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