研究実績の概要 |
最終年度である平成28年度で実施した各種実験からは、以下の知見を見出すことができた。すなわち、平均的な力場負荷としては同強度であるにも関わらず、力場負荷がランダムに変化する系では、被験者の誤差予測が正確におこなわれないことからprediction errorが大きく、経時的に不使用状態が漸増することが明らかになった。一方、増加分が一定の漸増負荷下では、被験者がそれに知覚することなく発揮力が増加していくことが明らかになった。こうした傾向は、被験者には意識されないほど小さい誤差量であっても同様であり、意識に上らない誤差特性を機械的に検出して内部モデルを変更していた。またMRIによる検討では、報酬系に関わる基底核の一部が、こうした無意識下での意思決定規範の変更に関与している可能性が示された。 以上のように本研究では3年間の研究期間を通じて、リーチング動作訓練に応じて自動的に運動負荷・介助を与えるロボティック・リハビリテーション法を開発し、被験者に気づかれること無く、無意識的な運動学習を進めることが可能であることを示した。また、その際に関わる運動学習の座を神経科学的に検出することに成功した。今後、被験者数を増加させ、基底核に関心領域を設定した上で、効果量の確定をおこなうほか、MRIの活動量と行動変化の間を数理モデリングするなど、神経科学とリハビリテーション医学をつなぐための更なる応用展開が期待された。 本研究の成果の一部は、査読付き国際学術論文に掲載された(Otaka et al. J Neuroeng Rehabil 12:66, 2015)。
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