研究課題/領域番号 |
25705001
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 晶比兒 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (20378516)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会法学 / 独占禁止法 / 立地競争 / 差別化 / 再販売価格維持 / RPM / 双方複占 |
研究実績の概要 |
今年度は、水平的提携がもたらす競争効果を解明するために用いる適切な経済理論モデルについて、見通しをつけた。水平的提携が企業間の競争に与える影響を分析するためには、合併規制に関する経済理論モデルが参考になる。同質財に関する非対称企業間のクールノー競争モデルと合併の関係については研究を済ませているところ、今年度はこれを差別化財のモデルに拡大した。第一に、立地競争モデルと合併規制に関する文献のサーベイを行い、非対称性を導入したモデルの構築を行った。立地競争モデルで非対称性を導入すると、均衡が存在しない可能性があるため、先行研究では非対称性を明示的に導入したものはわずかにしかない。それらのいずれも、本研究が想定する分析には適切でないため、独自にモデルを構築し、二つの研究会で報告した。研究会で得たアドバイスを基に、モデルの改訂を進めている。第二に、需要者の好みによって売り手が水平的に差別化されている場合によく使われる線形の需要関数を用いて、再販売価格維持の経済効果を分析した。小売業者の直面する需要曲線は、上流のメーカーと下流の小売業者の双方が差別化されている場合と片方のみが差別化されている場合とでは異なる。研究会では下流が同質的な場合の研究成果を報告し、その後、上流・下流の双方が差別化されている場合についても分析を行った。その結果、競争政策の分野で比較的よく使われているZissの需要関数には問題があることが判明した。そこで経営学で1990年代に提唱されていた需要関数を調査し、Choiの需要関数が比較的問題が少ないことが分かった。この需要関数を用いた再販売価格維持に関する論文は来年度早々に公表を予定している。再販売価格維持は水平的提携ではないが、そこでのモデルの組み方は、水平的提携の競争効果分析にもそのまま応用可能であるという示唆を、共同生産目的の水平的提携について得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水平的提携の競争効果を分析するための理論モデルの習熟と開発に予想以上の時間がかかったため、当初の予定よりも作業は遅れている。とりわけ差別化財のベルトラン競争モデルについて、流通取引に射程を広げて分析したことは当初の研究目的を超えた作業である。しかしながら、この作業により、水平的提携を分析する場合にも適切な需要関数を絞り込むことができた。この知見は、流通取引に視野を広げなければ得られなかっただろう知見であり、かつ今後の研究にも広く(すなわち水平的提携や水平合併だけでなく、垂直的制限や垂直合併にも)使える成果であるため、不可避かつ意義のある遅れであった。
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今後の研究の推進方策 |
理論モデルによる分析が最も進んでいるので、当初の研究計画よりも検討対象とする水平的提携のタイプを絞り込み、水平的提携のガバナンス構造を盛り込んだ競争効果分析を確実にまとめる。
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