1 競争企業間の水平的提携のガバナンス構造と競争効果の解明:(1)数量競争が行われる市場において、相当数の企業提携がprofit sharingとして分析でき、その競争効果分析には水平的合併規制の基準を利用できることを、経済分析によって明らかにした。長期的なシナジー効果も競争効果分析に視野に入れられることを具体的な事例を用いて論じ、ガバナンス構造との関係で競争効果を分析するアプローチの有効性を明らかにした。(2)価格競争が行われる市場については、対称的な差別化のモデルに限定して分析を行った。モデルの妥当性を検証し、垂直的な流通系列に拡大した場合にも頑健なモデルを特定した。 2 少数株式取得規制に関する序論的検討:競争企業間の水平的提携においてしばしば用いられる少数株式取得の規制について以下のことを明らかにした。少数株式取得の競争効果は、一方的な少数株式取得と株式持合いとでは大きく異なること、一方的な少数株式取得については過剰規制に陥るおそれのある分析にとどまっていること。 3 経済活動のグローバル化と企業間提携の規制:サプライチェーンのグローバル化が企業間提携に対する独禁法規制にどのような問題をもたらすかを分析した。(1)サプライチェーンのグローバル化が最も鮮明に現われる局面として、独禁法の域外適用に関する比較法研究を行い、国際公法・国際租税法の研究も進めた。(2)競争当局間の執行協力が進んでいる国際合併と対照的に、カルテル規制では制裁の段階において国家管轄権の単独行使の側面がなお強いことから、実体法ルールの国際的収斂が進んでいない水平的提携の分析については、国際協力がいっそう重要になるという示唆を得た。
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