研究代表者の異動にともなう諸事情のため、延長した平成28年度は、データベースの公開についての処理を中心に行った。特に平成27年度までに蓄積した経典データ・僧・人名データ・正倉院文書の基礎となる断簡データ・紙データ・画像データなどの諸データを統合的に閲覧できるようなシステムの構築を行った。システムそのものはオントロジのシステム等を活用し、関連する情報をつなぎ、見せることを可能とするしくみとして展開することができた。また、経典の情報については大正新脩大蔵経データベース(SAT)のデータとのリンクを貼ることで、正倉院文書から経典情報を直接得ることを可能とするデータベースとすることができた。 一方で、英語化等については、予算上の制約も多く生じ、実現することが困難であったため、引き続き本事業終了後も作業を継続し、公開に向けた展開を行っていくこととする。 本研究で生じた諸課題は、とりわけ、歴史資料のデータ内から経典情報を抽出するなどの際に生じた。資料の内容から経典の抽象的な情報を取り出すという行為自体も一つの過去の分析であり、その分析を行いつつデータを作成した。当時の人々が、経典というある種の抽象的なものをどのように呼称し、分類したかなどを踏まえ、その中から適切なリンクをはるという作業であるとともに、複数巻1セットのものをバラバラに管理している、混ぜて管理しているようなものをどのように処理するかなどが課題となった。これらの課題については、今後の科学研究費事業等でも反映し、広範な歴史資料のデジタル化手法の構築に結び付けることとなった。 研究成果としては、国際会議(PNC等)で関連する報告を実施するとともに、人間文化研究機構の共同研究において、課題整理報告をおこなった。
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