特別支援学校では、2007年に特別支援教育が学校教育法に位置づけられ、障害のある子ども一人ひとりのニーズに応じた教育が進められてきている。教師は特別なニーズに応えるため教室まわりで「構造化」と呼ばれる環境調整を行って授業を展開している。一方、そうした教室の多くは一斉授業をメインとする一般学校に近い教室計画となっている現状がある。今後の特別支援学校の教室計画のあり方として、構造化への配慮が求められる。本研究の目的は、今後の特別支援学校の教室計画に資する基礎資料を得るための研究の一環として、知的障害特別支援学校を対象に教室の視覚的構造化および授業展開の実態を捉え、教室計画で構造化に配慮すべき事項を明確化することである。 本研究では、平成25年度~27年度の研究期間に以下の検討を進め、知的障害特別支援学校の教室計画で構造化に配慮すべき事項を明らかにした。 1.国内事例における教室の視覚的構造化と授業展開:千葉・東京・茨城・神奈川・京都・広島にある計8事例に対して、教室まわりの計画、家具配置、掲示物等の特徴を記録して教室の構造化の実態を明らかにした。千葉の1事例に対してはさらに1日の授業の様子を観察することで、構造化と授業展開の繋がりを捉えた。 2.海外事例における教室の視覚的構造化:北欧スウェーデンの4事例、韓国の3事例に対して、1.と同様に教室まわりの計画、家具配置、掲示物等の特徴を記録して教室の構造化の実態を明らかにし、国内事例と比較した。 3.国内事例におけるICT機器導入教室の視覚的構造化と授業展開:将来的なICT教育の普及に備えて、1.で対象とした千葉の1事例において電子黒板(集団学習に有効)3台、タブレット端末(1対1学習に有効)6台を導入し、これらICT機器の導入によって教室の構造化および授業展開がどのように変わるのかを検討した。平成28年度以降も検討を継続する。
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