研究概要 |
幼児期前期のブロック(積み木)遊びの発達を検討するにあたり、まず、穴の形に適合するブロックを穴に入れて落とす課題であるブロック穴入れ課題をテーマにとりあげた。先行研究によると30ヶ月児でも2つのブロックから正しいブロックを選択して穴に入れることは難しいことが報告されている。正しく穴に適合するブロックを選ぶには、まず、図形を正しく認識する力とともに、実行機能も関連していると考えられる。本研究では、幼児の図形識別能力の発達を検討するとともに、二つの選択肢から適合するブロックを選んで落とすブロック穴入れ課題における課題遂行能力と実行機能との関連性を検討することを目的とした。 まず、図形識別能力の発達を検討するために、保護者による研究参加の同意が得られた幼児を対象に、呈示された図形と同じ図形を選択する図形選択課題をアイトラッカー上で実施した。課題成績に関して、呈示図形の回転効果と形および月齢群による違いを検討したところ、月齢群の主効果が有意であり、高月齢児(N=19, 平均月齢 : 47.4, SD : 4.1)は低月齢児(N=16, 平均月齢 : 35.9, SD : 2.8)よりも有意に正答数が高かった。課題遂行中の視線分析を行ったところ、高月齢群の方が低月齢群よりも正解図形により早く視線を移し、識別のごく初期(1秒間)の間により多く、より長い時間正解図形を見ていたことが明らかとなった。また、呈示図形の回転の有無も、視線の動きに影響を与えていることが示唆された。 ブロック穴入れ課題と実行機能課題も実施し検討したところ、ブロック穴入れ課題の遂行力は、高月齢児の方が低月齢児よりも有意に高かった。さらに、月齢を統制してもブロック穴入れ課題遂行力と抑制機能の間には有意な相関関係があることが示唆された。
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