研究実績の概要 |
幼児期後半の積み木遊びの先行研究により,年齢および日常経験による構成物の複雑さの向上が明らかにされているが(e.g. Hanline, 2001),幼児期前期における積み木遊びの発達および遊びにおける養育者との相互作用についてはあまり検討されていない。ヴィゴツキーの社会文化的発達理論によれば,子どもの新しい物事の学習は大人との相互作用の中で行われていくと考えられる(バーク・ウィンスラー, 2001)。本研究では,幼児期前期の子どもの積み木遊びの様相を明らかにすること,および母親と遊ぶことによりどのように遊びが深化するか検討することを目的とした。 分析対象とした参加者は,月齢17~20ヶ月までの子ども12人とその母親であった。なお,全ての参加者は事前に保護者より研究参加に対する同意を得ていた。参加児は,全7種類の積み木を用い,一人で積み木遊びをする一人場面,母親と一緒に積み木遊びをする母子場面の二場面(実施順序はカウンターバランスを取った)で自由に遊ぶよう促された。ビデオ映像に基づき,子どもが使用した積み木の数および種類数,子どもが接する構成物の複雑さ,子どもの行動について分析を行い,一人場面と母子場面をWilcoxonの符号付き順位検定を用いて比較した。その結果,使用積み木数では有意な差は認められなかったが,使用積み木の種類数(p < .01),構成物の複雑さ(p < .01),子どもの構成行動(p < .05)は母子場面の方が増していた。以上のことから,積み木遊びの初期発達においては,母子相互作用があることにより,子どもが使用する積み木のバリエーションが増え,構成行動が促進され,関わる構成物の複雑さが増すことが示唆された。今後は対象年齢層を広げてさらに詳細な検討を行う予定である。
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