前年度までに行っていたブロック穴落入れ課題については、改良課題を用いて再度データ取得および分析をし、結果を学会にて発表した。また、幼児期前期の積み木遊びの発達についての縦断データを取り終えた。積み木遊びについては幼児期後半を対象とした先行研究が多く、子どもの年齢が上がるにつれて構成物が複雑になることが明らかにされているが(e.g. Hanline、 2001)、幼児期前期における積み木遊びの発達および遊びにおける養育者との相互作用についてはあまり検討されていない。ヴィゴツキーの社会文化的発達理論によれば、子どもの新しい物事の学習は大人との相互作用の中で行われていくと考えられる(バーク・ウィンスラー、 2001)。本研究では、幼児期前期の子どもの積み木遊びが、親子で遊ぶ場面と一人遊び場面でどのように異なるか、また、1年後にどのように進展するか検討することを目的とした。 研究参加者は事前に保護者より研究参加に対する同意が得られた、月齢17~47ヶ月までの子ども43人とその母親であった。参加児は計7種類130個の積み木を用い、一人で積み木遊びをする一人場面、母親と一緒に積み木遊びをする親子場面の二場面(実施順序はカウンターバランスを取った)で自由に遊ぶよう促された。子どもが接する構成物の複雑さは、各場面のビデオ映像の中から5時点の静止画を作成し、先行研究を参考にして評定した。約1年後にも同様にデータを取得した。参加者を年齢に応じて3群に分けて分析すると、中年齢群では一人場面においては1年間で構成物の複雑さが大きく変化したのに対し、親子場面では初めから一人場面よりも高い値を示し、時期による変化は認められなかった。子どもの積み木遊びは、2歳から3歳にかけての時期において、親子によるやや高度な遊びが先行することで、子どもの一人遊びの充実につながることが示唆される。
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