研究課題/領域番号 |
25750379
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
松井 愛奈 京都文教大学, 臨床心理学部, 准教授 (40377007)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保育環境 / 想定外 / 遊び / 子ども / 発想 / 保育者 / 対応 / 理由 |
研究実績の概要 |
保育における物理的環境と想定外の使い方について,2014年8月,ニュージーランドにおける保育施設6園において,保育者に対する質問紙調査(2013年に国内で実施した質問紙の英訳版:一部改訂)を行った(回収数23)。 想定外の使い方の具体例5つについて,もし子どもがそのような使い方をしていたら,保育者としてa)どのように対応するか:迷いなく認める/葛藤はあるが認める/葛藤はあるが認めない/迷いなく制止する/その他(具体的に)のいずれかを選択,b)a)の理由(自由記述)を尋ねた。日本(松井, 2013)とニュージーランドの比較を行ったところ,「すべり台逆さのぼり」「ごっこ遊びで絵本を間仕切りとして使用」「ぬいぐるみを食材として使用」が,日本と比べてニュージーランドの方が認める割合が高く,「タンバリンを靴として使用」「手押し車に乗る」は差がなかった。特に「ぬいぐるみ食材」については「狩猟を実際に目にしている子どもはそれを再現している」「子どもの文化的背景は様々であり尊重すべき」等の理由が述べられ,文化による影響が大きいと考えられる。 想定外の使い方に関して,「想定外のことは毎日起こり,価値をおいて大切にしている」「自由に解釈して創造的に使える教材を意図的に用意している」「健康/安全が損なわれなければ,想像的,創造的,表現豊かにどんな形で使用してもよい」「挑戦やリスクも重要」など,安全性の確保がなされていれば肯定的に捉える意見が大半であった。日本(松井,2013)のように,「子どもの想像(創造)力をのばすためにはどこまでを認めるか難しく悩む」「子どもの力や楽しみたいという思いは受けとめたいが危険につながることもあるので境が難しい」といった想定外を認めるか否かの判断の難しさについての言及は見られなかった。子どもと保育者の比率や園空間等,安全確保につながる最低基準の差による影響もあるのではないか。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度に予定していた通り,ニュージーランドにおける就学前施設6園,小学校1校において,観察調査,質問紙調査,インタビュー調査を完了した。 国内の保育所および幼稚園における観察調査研究を継続し,分析を進めている。 以上の研究調査に関して,2014年度は学会ポスター発表を2回実施した。
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今後の研究の推進方策 |
国内における観察調査研究を進め,事例の収集と分析を進める。 研究の最終年度のまとめとして,これまでの調査結果に基づいて考察を進め,学会発表を実施し,論文を執筆する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じているが,当該年度(2014年度)については,前年度(2013年度)未使用額(213,980円)が含まれている。また,実際の支出額(1,374,299円)は,当初の直接経費支払請求額(1,200,000円)を上回る支出となっており,順当な経費支出であると言える。
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次年度使用額の使用計画 |
これまで保育観察において撮影したVTRのテープ起こしと,ニュージーランドにおける調査を研究対象園にフィードバックするための翻訳にかかるアルバイト・人件費の支出や,研究成果発表のための諸経費等を支出する必要がある。
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