社会的文化的存在としての人間に関するフロイトの探究の主な方法論的特徴が、探究者の自由連想と、情動および幻想の集団的次元の問題化にあることを明確にした。また、範例的な位置を占める『オイディプス王』読解が、図式化に向かう傾向とともに悲劇的情動(痛みを帯びた快)への関心を含み、前者が後者によって撹乱されうることを指摘した。この探究方法に備わる多面性と緊張関係が以降、とくに1960年代以降のフランスで、精神分析の言説構造の改変(フェレンツィ、ラプランシュ)や母子関係論の再開発(アブラハムとトロック)、人文学領域での新たな問題提起(アンジュー)、哲学的概念の再検討(デリダ)のうちに現れたことを示した。
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