20世紀初頭中国における「琴学」についての考察を行うにあたり、当時中国各地で営まれていた雅集や琴社の活動を全国規模に高めたとして評価される周慶雲を調査対象とすることから開始した。周慶雲および同時代の琴学者による活動は、1)各地での琴社の組織、2)全国的な琴会の開催、3)「国楽」の制定や「雅楽」の整備に対する琴学者の参画など、様々な文化現象として現れた。特に、北京大学音楽研究会古琴導師の王露や大同楽会代表の鄭覲文は、西洋音楽推進派の代表的人物である蕭友梅から断定的な批判を受けながらも、西洋中心主義に傾く近代中国において古典文化の「琴学」に正当な位置づけを与えようとした動きとして重要であった。
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