本研究の目的は、中世~近世初期の宗氏領国の特質を日本列島の政治史、とりわけ中央政権との関係性のなかで解明することであり、下記の成果を得た。①「応永の外寇」を総合的に検討し、戦争発生から和平成立までの過程で室町幕府が積極的な対応をとった形跡はなく、宗氏領国が主体的な外交を展開したことを指摘した。②宗氏領国は国境地域の現実に即応して独自に形成されたもので、幕府・将軍の権威は嫡流家の家督相続の正統性を担保する局面で利用されたことを指摘した。③宗氏領国の維持は対馬という狭い地理的範囲での対応だけでは実現できず、環玄界灘地域の政治・経済の安定への積極的な関与が必要であったことを指摘した。
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