本研究では,主として三重県四日市市・長野県飯田市を事例に,「多文化共生」を持続的な地域発展へと展開していくための実証・理論面での検討を行った。地域労働市場に関する分析からは,長期的な居住が必ずしも安定した生活を意味しないこと,および,日本人もまたそうした市場の動向に左右されうることを示した。また,既存住民による外国人受け入れ意識を集合的消費やモビリティの差異の観点から検討し,外国人・日本人住民を包含した「地域」に着目することの有効性を示した。実証研究の成果からは,高い移動性と寛容性を両立したコミュニティ構築に向けた取り組みの必要性とともに,さらなる理論的練成が求められることが示された。
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