研究課題/領域番号 |
25780077
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
橋本 有生 早稲田大学, 法学学術院, 助手 (90633470)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 成年後見 / 身上監護 / 意思決定支援 / 合意形成型アプローチ / メディエーション |
研究概要 |
わが国は、判断能力が不十分な成年者に対して、その意思決定を支援する制度として成年後見制度を用意している。しかし、この制度は主に財産管理のために機能するものであり、人々が実際の生活において必要とする自己の身上にかかわる決定には、十分に対応できていないとの批判がある。本研究は、そのような成年者の身上監護事項について決定がなされる際に、その者の利益を保護しながら、意思決定が行われるために必要と考えられる制度保障のあり方を検討するものである。 本年度は、高齢者や精神障害者等の身上監護事項をめぐって、家族や周囲の者の間で意見の対立が生じた場合、その紛争解決手段として、メディエーション(調停)手続きを用いることができないか、イギリス・日本・カナダ(オンタリオ州)の各法域の制度を調査し、比較検討した。 先ごろ、わが国も批准した障害者権利条約は、締約国に対して、従来の成年後見制度に代表される「代行型の決定」から「支援型の決定」へのパラダイムシフトを要請するものであるといわれている。メディエーションのような合意形成型のアプローチは、条約が目指すところの「支援型の決定」に分類されるものと思われる。したがって、わが国の将来における意思決定支援制度を検討するうえで、合意形成型アプローチの紛争解決システムを研究することは、有意義であると思われる。とりわけ、成年後見制度を申し立てる際に、メディエーションを経ることを義務付けているオンタリオ州の制度は、非常に参考になるものであった。この制度は、紛争が生じる前、またはその争いが激化する前の段階において、判断能力が不十分な成年者について、当事者が必要な事項を話し合うことができるという利点があり、学ぶところが大きかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、最初にイギリスにおける意思決定支援制度の立法過程の議論、制定法の中身、実際の運用状況等を明らかにする予定であったが、これを2014年度の研究にまわした。その代わりに、2013年度では、イギリスおよびカナダにおける合意形成型アプローチの研究を行い、わが国が目指すべき意思決定支援システム像の見通しをたてた。 本研究の最終目標は、あたらしい意思決定支援システムの提唱であるところ、2013年度の研究によって、具体的に目指すべきシステム像の見通しがたったため、研究の進捗状況は、おおむね順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度は、イギリスにおける意思決定支援制度の立法過程の議論、制定法の中身、現在指摘されている問題点を研究する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度に、イギリスの意思決定支援制度の立法過程と現状の分析を行い、そのために海外調査を行う予定であったが、イギリスのウォーリック大学で、イギリスおよびカナダにおける高齢者の身上監護をめぐる紛争解決支援制度について、報告する機会を得たため、計画を変更して、そちらから着手することにした。 イギリスの意思決定支援制度の立法過程と現状の分析を行うための海外調査に充てる予定である。
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