わが国の現行法は、判断能力が不十分な者の身上事項について決定がなされる際に、人格的利益が損なわれないような保障を提供するものであるとはいいがたい。そこで本研究は、身上事項のうち、特に重大な利益に関わる医療・居所・面会交流の決定に焦点を当て、イギリス法およびカナダ法を参照しながら、わが国が導入すべきセーフガードの在り方について検討した。 その結果、まずはそれらの事項の決定にあたり本人、家族、介護・医療従事者等の間で、行政の監督の下、協議での決定を目指し、協議が整わない場合に初めて裁判所が代行決定機関として判断を行うという合意形成アプローチ優先の手続モデルを提示した。
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