これまで研究が不足していた欧州諸国も含めた比較法研究を通じて、出願経過の考慮が所与であるかのように受け入れられ意識的検討がなされてこなかった我が国の理論・実務を相対化した。出願経過の考慮態様を①クレーム解釈資料性と②禁反言の基礎とに区別して論じるべきと提唱した上で、①に関しクレーム解釈資料論一般に視野を広げ、同資料を原則的に、クレーム・明細書・図面、及び(解釈の基準主体たる)当業者の一般的専門知識に限るという立場が前向きに検討されるべきと示した。②に関しては、侵害訴訟で実現されるべき具体的妥当性と考えられているものも各国共通ではない中で、日本の出願経過禁反言の適用要件・効果の妥当性を検討した。
|