発見は大きく3つである。第1に,新興民主国で発生しやすい選挙時の民族主義的な動員は,低格差国では社会統合的な側面を有する傾向がある一方,高格差国では排斥的なそれに転嫁しやすい。但しこれが新興民主国特有の現象であるか不明のため成果公刊には至っておらず引き続きの研究を要する。第2に,上記のような選挙近接効果が数か月間の短期間でも観察されることがある。またその過程では極右政党等以上に中道政党等の影響も看過できない可能性が高い。第3に,領土交渉等の国家間交渉においても,世論圧力の回避のために選挙近接時ほど妥結に至りにくいことが確認され,頻繁な民主的選挙と柔軟な外交交渉の両立困難性が示唆された。
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