研究課題/領域番号 |
25780158
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
西村 淳一 学習院大学, 経済学部, 准教授 (40612742)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高等教育 / 研究室教育 / 産学連携 / 博士研究者 / キャリアパス / 特許 / 学術論文 |
研究実績の概要 |
第一に、国立国会図書館デジタル化資料を用いて、1999年~2001年度に博士号を取得した理学、工学、保健分野の研究者約1800名のリストを作成した。主な入力項目は、授与大学、研究科、専攻分野、授与年、取得学位、論文タイトル、指導教員情報である。さらに、その博士号取得研究者と指導教員について、ウェブ検索より経歴情報と連絡先情報を入手した。 第二に、特定された博士号取得研究者うち約250名について、ウェブ検索やResearchmap等の公開情報より研究成果の情報を取得した。研究成果は様々なカテゴリー別(論文、特許、受賞、競争的資金の獲得、社会貢献、講演等)に収集した。 第三に、ヒアリング調査を基に、博士課程における研究室教育に関するアンケート調査票の設計を行った。調査票では、研究室教育の取り組みが博士人材のパフォーマンスにどのように影響しているか分析するため、研究テーマの設定方法から研究手法の獲得における知識源、指導教員による研究環境の整備等を尋ねている。また、産学連携教育への取り組みについても該当する方に尋ねる。調査対象者には、現在企業研究者である方以外に、知識の波及効果を測定するため、大学や公的研究機関の研究者となった方も含む。 第四に、アンケート調査のプレテストを実施した。理学部または工学部において博士号を取得した方に回答を頂き、回答者と1時間程度、アンケートの内容について議論した。プレテストでは、研究過程における困難に対処するため、指導教員以外の外部知識源を活用することの重要性を確認した。最後に、関連する文献の調査と整理を実施し、今後の研究に有益な知見を得た。 以上の実施内容は、これまで十分に検討されてこなかった高等教育と博士人材のパフォーマンスとの関係を定量的に分析していくための基礎資料となるものであり、今後の研究を進めていくうえで重要となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度予定していた博士号取得研究者のリスト作成、研究者の研究成果の情報収集、アンケート調査票の設計とプレテストの実施ついて順調に進展していると判断できる。 第一に、国立国会図書館デジタル化資料より、1999年~2001年度に博士号を取得した理学、工学、保健分野の研究者約1800名のリストを作成し、当該研究者の基本情報の入力を終えることができた。また、ウェブ検索等から、当該研究者のキャリアパスについて情報も得ることができた。 第二に、リスト化された博士号取得研究者のうち約250名について、様々な研究成果の情報を入手することができた。現時点では、リスト化されたすべての研究者の研究成果について情報を入手できていないが、今後、アンケート調査の実施や集計と並行して、研究成果の情報収集を行う。 第三に、博士課程における研究室教育に関するアンケート調査票の設計を行った。さらに、理学部と工学部出身の博士号取得研究者にプレテストの協力をして頂き、有益な助言を得ることができた。これらはアンケート調査票の改訂に役立っている。 最後に、関連する文献の調査と整理を行うことで、今後の実証分析や研究方針への示唆も得られた。特に、NISTEP等の調査では、大学レベルでの高等教育の方針に関するアンケート調査を実施している文献や、博士研究者のキャリアパス、テーマ設定等に関する文献もあり、今後の研究に有益となった。以上の点から、来年度以降、研究室教育と博士人材のパフォーマンスを分析するモデルの開発、計量分析をするための準備が進んでおり、本年度の達成度はおおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進については、リスト化された博士号取得研究者の研究成果の情報収集を継続して行うこと、アンケート調査の実施と集計作業を行うこと、さらに、分析モデルの構築を行い、博士人材のパフォーマンスへの研究室教育の貢献について定量的に分析を進めることが重要となる。 第一に、リスト化された博士号取得研究者の研究成果について、ウェブ検索から研究成果のカテゴリー別の収集を継続して行う。また、アンケート調査に回答を頂いた方にCurriculum Vitae(CV)を提供してもらうことも考えている。さらに、特許電子図書館、Thomson Innovation、Web of Science(Web of Knowledge)、DWPI、Google scholarのデータから論文や特許の引用関係についても収集を開始する予定である。 第二に、アンケート調査を本格的に実施する。リスト化された研究者のうち、約1000名についてはE-mailアドレスの情報を入手している。よって、まずメールベースでのアンケート調査を実施する。次に、E-mailアドレスが不明な方についても、研究室情報あるいは所属先情報が判明している方に郵送にてアンケート調査の送付を行う。その後、回収されたアンケート調査のデータ入力と集計作業を行う。集計結果は回答者へフィードバックを行う。 第三に、博士人材のパフォーマンスと研究室教育における分析モデルを構築し、実証分析を進める。モデルの構築は、これまでに構築されたリスト情報、アンケート調査の結果、関連する先行研究のモデルをベースに行う。クロス集計分析だけではなく、出身研究室や研究者個人の属性を考慮しつつ、研究室教育(産学連携教育含む)が博士人材の研究開発成果やキャリアにどのように影響するのかを把握するために、計量経済学的な手法を用いたモデルで分析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
リサーチアシスタントを行う学生の雇用時間が少し削減されたため。
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次年度使用額の使用計画 |
アンケート調査の実施における学生雇用費に利用する。
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