本研究は、1960年代以降の日本における炭鉱閉山のプロセスと、その社会経済的影響について経済史的な視点から検討した。その結果、第1に、企業、労働組合、地方自治体、国のそれぞれが役割を分担していくことをとおして、閉山処理が徐々に定型化していったことが明らかとなった。第2に、地方自治体と労働組合が閉山プロセスで主要な役割を担っていたが、コストは前者に、ベネフィットは後者に重点的に配分されていたことが明らかとなった。 本研究は、戦後石炭産業史研究の進展に貢献するだけでなく、将来の産業構造転換にともなう社会経済的影響とその対応を考察するうえで、重要な示唆を与えるものである。
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