研究課題/領域番号 |
25790012
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
三條 舞 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特任助教 (60588797)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ボロン酸 / ピロリン酸 / トランジスタ / シーケンシング |
研究概要 |
本研究は、電界効果トランジスタ(FET)の原理を用いた電気化学的測定によるDNAシーケンシング技術をベースに、トランジスタゲート表面の造り込みによって、新しい手法に基づくFET型DNAシーケンサを開発する事を目的とする。ここでは、一塩基伸長するごとに放出されるピロリン酸(PPi)を特異的に認識するゲート絶縁膜表面を構築し、長鎖塩基配列解析を可能とする遺伝子FETの開発を目指している。初年度は、遺伝子FETセンサー部の基礎となるPPiを選択的に認識結合するレセプターの設計に重点を置き、物性評価で十分に性能が確認され次第ゲート絶縁膜表面へ導入、表面特性解析を行った。具体的には、PPiレセプターとして“可逆的”な共有結合を形成するPBA誘導体が有用であると考え、種々のPBA誘導体とPPiの相互作用を11B-NMRおよび31-NMR測定によって検討した。PBAの錯形成能に対してPBAが有するpKaの制御が重要な因子となることから、様々なpKaを有するPBA誘導体とPPiの相互作用を確認した。その中でも特異的に低いpKaを有するピリジルボロン酸(PyBA)がPPiと優位な相互作用を示し、特に酸性領域において結合安定性が増加する傾向が確認された。このPyBAのPPiに対する選択性を定量的に議論するため、得られたNMRの強度比から平行定数を算出したところ、PyBA/PPi結合体の平衡定数は950と高い値を示した。この値は、これまで知られているボロン酸-ジオール結合の中でも最も高い範疇に分類される。さらに興味深いことに、PyBAは他の代表的なリン酸化合物(一リン酸、三リン酸、dATP)と殆ど結合せず、PPi特異的な結合を示した。この結果は、PPi認識遺伝子FETにおいて夾雑物となるリン酸化合物、特にdNTPの影響を受けることなくPPiを選択的かつ定量的に検出できる可能性を示唆する。このPPiを選択的に認識結合するPBA誘導体に関しては未だ報告されておらず、この結果は基礎学問の観点から大変興味深い。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度予定していた、ピロリン酸を特異的に認識結合する新たなレセプターの設計について予定通り遂行し、十分な成果を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、引き続きピロリン酸を特異的に認識するボロン酸誘導体を導入したトランジスタゲートを構築し、ピロリン酸の高感度電位検出を目指す。特に、高感度な電位計測に適した電極表面構築を徹底的に行う。また積極的な学会発表を行い、成果を論文にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度にボロン酸レセプターの基板構築を行い電位測定まで行う予定であったが、高感度な電位計測に適した電極表面構築を目指すに当たり、レセプターの設計と絶縁膜表面への造り込みへフィードバックしたため未使用額が生じた。 このため、基板表面解析および電位測定さらに学会での発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に当てることとしたい。
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