現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
前欄の3項目に対して、それぞれの達成度を陳述する。 まずカップ積の研究の帰結として、筆者のテーマである「カンドルの特性類」に新たな視点を与えた。その視点とは、相対群コホモロジーとカンドルを結ぶ視点と、特性類を積と双線形型式から視点である。これまでカンドルの印象は単なる組み合わせ的な計算と認知された傾向があったが, この視点により, 数学的な豊富さを示すインパクトがあった。その上、カップ積の設定は、非常に一般的な設定として記述することが出来た。これは筆者が構想した結果以上のものであった。また当初の計画では、カンドルの特性類を「群」構造のみに期待をしていたが、「環」構造こみで考察した方が良いことが解った. 第二に、当カップ積と古典的研究との関連であるが、古典的なBlachfield双対を明確かつ完全に再現できたことは満足のいくものであった。それもその証明では当双対に現れる道具立て(Bockstein作用素やTrace map)の本質を浮き彫りにした。また、Casson-Gordon符号数の換言には関しては、当初の予定の以上の結果である。但し、少々複雑な議論を要してしまい、今後にむけ課題が残っている. 第3の結果として、捩れアレクサンダー加群上に双線形型式構造を与えたが、そこで使われた技術は線形代数という簡単なものであった. その際、カンドルとFox微分というもの関係性も表示することが出来た点は, カンドルと群との関連をつなげる上でインパクトがあると考えられる. しかし具体的な例において、筆者の方法では詰まらない例が現れる.その点を今後改良の余地がある.
|
今後の研究の推進方策 |
カップ積に関する結果は非常に一般的であった。そこで今後の研究方針として, 具体的な設定を代入することで、多くの応用を与え新しい理論を展開することが考えられる。その際注目している手段は可解フィルターという概念である. それは結び目のボルディズム群を研究する段階を与えた有名なフィルターである. 例えば, この視点によれば, 上記のBlanchfiled双対やCasson-Gordon符号数は, 段階としてn=1とn=1.5のものである. そこで今後の課題として, その高次の段階の対象物において, 計算法を与えることが考えられる. その際, カップ積による解釈が鍵をなし, 特にカップ積の非可換化がもとめられるる. しかしその際に非可換的な代数的議論が必要であり, 容易ではない. ひとつづつ要約することが求めらられる. その際に, 具体的な計算例を多く与え, そこから一般論の位置づけを提示したい. またこの研究は3次元的な手法であったため, それを4次元に昇華させる方針が考えられる. 昨年度の報告書で述べた「4次元レフシェッツ束」を射程範囲にしている。実際、今年の研究は3次元的な研究であり、をれを1次元あげる事で4次元レフシェッツ束に応用できる事が期待される。特に, 上記のカップ積の結果は, 量子表現に適応できる設定として記述されたため, 計算例が多く期待できる.
|