研究課題/領域番号 |
25800049
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野坂 武史 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 助教 (00646903)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 数学 / 幾何学 / トポロジー / 結び目 |
研究実績の概要 |
平成27年度の主要な結果を二つ述べる。 まず一つは、3次元多様体である基本類の研究である。基本類の研究は100年以上の歴史があるが、多様体に境界がある場合の基本類は状況が複雑で研究が少なかった。実際、この基本類を用いて(〝特性類"の視点から)、多様体の不変量を相対的に多く構成可能だが、しかし計算や実用性に欠けていた。そこで本研究では、多様体を結び目の補空間とした場合に、基本類を厳密に記述する2次元的な図的計算法を提示した。その方法は具体例が多く、たとえば双曲体積やDijkgraaf-Witten不変量など含む内容になっている。この研究でインパクトのある点は、群の相対ホモロジーとカンドルのホモロジーとの関連を明確な式で記述したことである。その際に、カンドルのホモロジーが、群の〝malnormality”や3次元多様体の双曲性が相性の良いことを示した。また〝Transfer"を用いて, 相対群3コサイクルで、カンドルと相性の良いクラスを提示することができた。 次の結果は、3次線形性の不変量についてである。昨年の報告では、2次形式の不変量について説明したが、今年はその議論を1つ次数を上げる研究を行った。詳細を述べると、3次形式に値を持つ、結び目の不変量を構成することに成功した。それもその方法は一般的な設定で整理するため、多くの具体例を構成することができる。実際、この計算法は実用的で、具体的な結び目に対して、計算することができる。さらに、結び目が双曲構造を持つとき、その3次形式がカップ積の形として復元する結果を得ることがができた。このカップ積の定義は複雑で思弁的であるため研究が少なかったが、この結果によって、カップ積の図的計算法を編み出したことになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前欄の2項目に対して、それぞれの進捗状況を陳述する。 まず前半の基本類について述べる。まず主結果が、結び目や双曲結び目という一般的な設定で示した点は順調な進展であった。その際に、JSJ分解というものに沿い、議論を分割することによって、その結果を得ることができた。その分割された場合で、トーラス結び目というクラスが非常に厄介であったが、上の結果ではそれを解決することができた。また群の〝malnormality”という概念は3次元多様体論で重要視されていたが、カンドルの議論でもその概念が有用である事を見出したことはインパクトがある。しかし、まだこの議論がコンピュータプログラムとして記述できておらず、まだ実用性に欠ける側面がある。ほかに未解決な点として、双曲性と群のコホモロジー類の差がどれほど現れるか具体的に記述しない点がある。実際、この証明方法が双曲幾何の既存の量に帰着する議論であるため、双曲性がから現れない部分がでている(もしそうであって興味深い結果であるが)。 次に、3次形式の帰結として、筆者のテーマである「カンドルの特性類」について進展を与えた。実際、昨年は2次形式を行ったが、3次形式に似た結果を得た事は筆者の予想以上のものであった。実際、3次形式においては、2次の場合と同様の議論がつかえず幾つかの障碍が現れる。しかしこの研究では、その障碍の難点を明確に見抜き、一定の満足いく範囲で解決することができた。総じてこの研究により、低次元位相幾何学において3次形式に具体性と実用性を与えたことになる。なお幾何学において、3次形式の議論は少ないが、主要な研究で散在的に表れる。であるため、進展に可能性ある結果を与えることができ、順調な進捗状況だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
カップ積や基本類に関する結果は非常に一般的であった。そこで今後の研究方針をのべる。まずは具体的な設定を代入することで、多くの応用を与え新しい不変量の形式を構成することが考えられる。例えば、あるフレアーホモロジーの次数が3次形式による記述や、スピン構造から構成される3次形式不変量などがあり、それを復元する研究は大変興味深い。次に、考えられる方針として量子不変量との関連がある。量子不変量とはChern-Simons型の摂動理論に準じて、3次形式と2次形式にをばらす議論に基づいていた。であるため、そこに関係性を期待することは自然であり、もし成功すれば、インパクトがある。というのも量子不変量は幾何的な意味がつけづらい事が知られているため、その関係性が見いだされば不変量に幾何的意味をつける事が出来ることになるからである。以上の事をひとつづつ試行錯誤していく事が重要である。 また昨年の推進方策との類似であるが、可解フィルターにそって、可解群の情報を3次形式から解決する方針も考えられる。それは、昨年の2次形式の研究を進捗させる必要がある。この解決方法として、冪零的なフィルターに落として議論を考えようと試作している。実際、冪零においては3次形式の研究が幾つかあり(例えば、ミルナー不変量のマッセイ積による解釈やJohonson準同型の位相的解釈など)、様々な技術が確立されている。その技術を基礎に、進展させる方向性が考えらえる。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席予定の出張が、突然キャンセルになったため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
書籍やジャーナルの購入に使用する。
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