研究課題
本研究では、抗糖尿病因子として知られているアディポネクチン(APN)の神経変性に対する作用を検討する目的で、α-シヌクレイノパチーの病態モデル(培養細胞・マウス)に対するAPNの効果を検討してきた。平成26年度は、平成25年度から引き続きヒトα-シヌクレイン(αS)を神経特異的に発現するマウスに対しAPNのC末ドメインである球状APNを鼻粘膜投与した。運動機能異常が顕著でない2~3ヶ月齢のαS発現マウスにAPNを長期間投与した結果、ロ-タロッドやビームテストなどの行動試験においてが運動機能が改善する事を観察した。また、病理学的解析や生化学的解析の結果、球状APNの投与によりαSの蓄積・凝集が改善することが観察された。以上の結果や昨年度おこなったシヌクレイノパチーの細胞モデルに対するAPNのαS凝集抑制の結果から、APNが神経変性の病態を抑制することが示され、本年度米国神経学会誌に発表した(Sekiyama et al., Ann Clin Transl Neurol. 2014)。αS発現B103細胞において、コントロールと比較し低下したAktなどのインスリンシグナルがAPNの存在下で増強した。また、インスリンとAPNの共添加によりαSの凝集抑制効果が増大することを観察している。さらに、αS発現B103細胞においてAdipoR1のアダプター蛋白でありAktと結合が報告されているAPPL1の発現が上昇していることがわかった。APNシグナルやインスリンシグナルがシヌクレイノパチーの病態に関係していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
本年度予定していたシヌクレイノパチーモデルマウスへのAPN投与実験をおこない、その結果を論文発表したため。
リコンビナントAPNの添加/投与により、APNがαSの凝集を抑制するなど抗神経変性作用を示すことがこれまでの研究によりわかってきたが、そのメカニズムについての検討を進める。平成27年度は予定どおりレビー小体型認知症(DLB)モデルである変異型βシヌクレイン(P123HβS)発現マウスに対しAPN投与をおこない認知機能低下に対するAPNの効果を検討する。
αS発現マウスに対するリコンビナントAPN投与実験においてAPNの鼻粘膜投与で十分効果が得られたため、側脳室投与の必要がなくなり次年度使用額が生じた。
レビー小体型認知症モデルである変異型βシヌクレイン(P123HβS)マウスに対するAPN投与実験のためにリコンビナントAPN蛋白の購入や解析用の試薬の購入資金に使用する。
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