研究課題/領域番号 |
25840141
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研究機関 | 長浜バイオ大学 |
研究代表者 |
保科 亮 長浜バイオ大学, バイオサイエンス学部, 助手 (40373089)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 繊毛虫 / 細胞内共生 / クロレラ |
研究実績の概要 |
定点として設定した琵琶湖および関連水域より、約10種の共生藻保有繊毛虫を採集、形態およびDNA解析をおこなっている。当初の方法論では、採集した繊毛虫を単離して数日間培養し、細胞に含まれる餌として取り込まれた藻類の消化を促す予定であった。しかし、採集後あるいは単離後の維持が困難な繊毛虫種が続出した。そこで採集直後に固定しDNA抽出、共生種のrDNAをターゲットとしたPCRに切り替えている。ダイレクトシークエンスであるにも関わらず、ほとんどのケースではきれいなシングルピークが得られている。これは、各々の繊毛虫種が、天然下においても共生藻を細胞内で高度にクローン化させていることを示すものと考えている。また、いくつかの繊毛虫種が特定の共生藻種をシェアすることもわかってきた。同一共生藻種のシェアリングに関してはオーストリアから報告されていたが、周囲にいる自由生活型藻類を選択的に取り込んだためと考えられていた。しかし、本研究では各共生藻の多置換領域の比較から、種としては同一でありながら、それぞれの繊毛虫が持つ各共生藻が識別できており、同一の共生藻を1年以上の長期間にわたって維持していることが判明した。一般には繊毛虫における藻類との共生は一時的なものと考えられてきたため、この事実は長期的なサンプリングゆえに判明した大きな発見といえる。さらに、これら琵琶湖の共生藻がオーストリアのそれと種レベルで一致することから、本共生藻種が多数の繊毛虫でシェアされる、ワールドワイドな共生藻である可能性が出てきている。分子進化学的には本種がクロレラ科の新属新種になると考えており、記載のため単離とクローニングを急いでいる。 定点外のものでは宿主および共生種の両者に関して共通する種がなく、共生のユビキタス性/ローカリゼーションを探る上でも、さらに多数箇所のサンプリングが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究にさける時間が限られ、遠隔地のサンプリング調査が限られてしまった。また、平成26年度に予定していた共生藻の生理特性に関してアプローチできていない。一方、定点における研究では繊毛虫の共生藻選択についての概観を把握するに至っている。また、当初の計画にはなかった、代表的共生繊毛虫ミドリゾウリムシの共生種(Chlorella variabilis)と自由生活種(C. vulgaris)の比較ゲノムに着手しているほか、繊毛虫以外の藻類共生型プロティストの解析も進めていることから、研究の達成度はおおむね順調としたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる平成27年度はこれまでに得られたデータを取りまとめ、論文として公表することに注力したい。研究の幅を広げ、かつ効率よく研究を推進するため、共生状態にある繊毛虫の形態観察に関して琵琶湖博物館の研究者と、他の共生型プロティストに関して神戸大学の研究者と、共生藻の生理活性に関して立命館大学の研究者と協力して研究を進めることで調整している。 また、研究の新たな方向として着手した、共生種と自由生活種の比較ゲノムのデータをもとに、初期の細胞内共生における遺伝子の喪失、不活化、それにともなう生理特性の変化について研究を展開していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
顕微鏡購入取りやめのため。
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次年度使用額の使用計画 |
スペインで開催されるThe European Congresses of Protistology (ECOP)/The International Society of Protistologists (ISOP)合同会議への参加。および研究継続にかかわる消耗品、英文校正、論文投稿費等。
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