研究課題/領域番号 |
25850006
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
塩野 克宏 福井県立大学, 生物資源学部, 助教 (20610695)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 湿害 / 冠水 / 酸素通気 / 低酸素 / アブシシン酸 / イネ |
研究概要 |
我が国の食糧自給率を増やすためには、水田からの転換畑で深刻な問題となっている畑作物の耐湿性を向上させることが重要である。しかし、植物の耐湿性メカニズムには未解明な部分が多く、その方策を立てることすら難しいのが現状である。本研究課題では、耐湿性に深く関与しているRadial Oxygen Loss(ROL)バリアの形成をアブシシン酸(ABA)がどのように制御しているかを明らかにする。さらに、イネで明らかにしたROLバリア形成メカニズムを、ROLバリアを形成できずに耐湿性の低い畑作物と比較する。これにより、コムギやオオムギの耐湿性が低い原因を探る。これらを通じて畑作物の耐湿性強化に有効な方策の提案を目指す。 平成25年度、ABAの生合成に疾患のあるイネ変異体がROLバリアを形成できないことを3つのアリル系統で確認した。この変異体に外生ABAを与えるとROLバリアが復帰することを明らかにした。さらに、本来ROLバリアを形成しない好気条件で栽培した野生型に外生ABAを与えることで、ROLバリアを誘導させることに成功した。これらの結果はABAがイネのROLバリア形成を正に制御することを示している。 ABAがROLバリア形成時に果たす役割を理解するために、イネのROLバリア形成プロセスにおけるABA量の定量を実施した。その結果、ROLバリアを形成している根ではABA量が低下することが分かった。 ROLバリアを形成する条件下で根のABA量が減少のに対して、ABAが正にROLバリアを誘導するというという結果は一見矛盾しているように見える。この矛盾に対しては、ABAによるシグナル伝達系に異常のある突然変異体の解析が重要な回答を与えると考え、本年度よりABAを与えてもROLバリアを形成しないイネ突然変異体のスクリーニングに着手した。当初の計画よりも短い期間で多くの検体をスクリーニングできる方法を確立することができた。さらに、500系統のNMUにより誘発された突然変異体系統(M2世代)を確保した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定した計画を実施できている。 加えて、予想していたよりも効率的な突然変異体スクリーニングを確立できた。そのため、スクリーニングの実施にかかるとしていた予定期間(約2年間)を短縮できる可能性が高い。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、前年度に確立したスクリーニング系を用いて、ABAを与えてもROLバリアを形成できないイネ突然変異体の探索を進める。スクリーニングにはMNU処理により作出されたM2種子を使用する。このスクリ ーニングによりABAを与えてもROLバリアを形成できない、すなわち、ABAによるROLバリア形成機構に異常のある変異体を得ることを当該年度の目的とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
順調に突然変異体のスクリーニング系の確立のための実験が進んだ。そのために試薬、消耗品のために計上していた物品費を少なくすることができた。 当初の予定どおり物品費(試薬・消耗品代)として次年度以降に使用する予定である。
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