研究課題
本研究では耐湿性の重要形質であるRadial oxygen loss(ROL)バリア形成をアブシシン酸(ABA)がどう制御するかを明らかにするとともに、耐湿性の低い畑作物との比較により畑作物へのROLバリア形成の可能性を探ることを目指した。平成25年度、イネのABA生合成変異体への外生ABAの投与により、ABAがROLバリアを正に制御することを明らかにした。しかし、ROLバリアを形成中にABA量は低下しており、減少する物質が正にROLバリアを誘導するという矛盾を抱えた結果であった。この矛盾にABAシグナル伝達系の変異体解析が回答を与えると考え、平成26年度、ABAを与えてもROLバリアを形成しないイネ突然変異体のスクリーニングを実施した。確保した多くの変異体系統のスクリーニングを完了したが、ABA非感受性変異体は得られなかった。平成27年度、既知のABA非感受性となった変異体を取り寄せて劣勢ホモの種子を得た。さらに、データベースを利用した解析で、スベリン合成遺伝子が外生ABAにより発現が高まることを明らかにした。平成28年度、劣勢ホモの系統のROLバリア形成を調べたが、ROLバリア形成機能を失ったものはなかった。外生ABAがROLバリアの構成成分であるイネの根のスベリン化を促進することから、同様のメカニズムを畑作物がもつのかに興味が持たれた。そこで、本来ROLバリアを形成しないオオムギに外生ABAを投与すると、外皮がスベリン化とともにROLバリアを付与できた。本研究により、イネのROLバリアがABAを介したスベリン化により形成されることが分かった。さらに、耐湿性の低いオオムギもABAよりも下流のROLバリア形成能力を保持することから、イネとオオムギを比較した場合、ROLバリア形成の制御機構の違いはABAとそれよりも上流にあるシグナル伝達系にあると予想することができた。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
根の研究
巻: 25 ページ: 47-62
http://www.s.fpu.ac.jp/kankyo/Home/index.html