研究課題
根寄生雑草ストライガ(Striga hermonthica)は、ソルガムやミレットに寄生することからアフリカの乾燥地の作物生産に多大な被害を及ぼしている。これまでのポット栽培実験で、気孔閉鎖に関わるアブシジン酸(ABA)濃度は、土壌水分条件に関わらず宿主のソルガムよりもストライガでは約10倍も高く、ストライガの寄生によりソルガムで増加することが分かった。ストライガ自身がABAを合成し、宿主へ輸送することにより宿主からの養水分収奪に関わる蒸散流を能動的に制御している可能性がある。本年度は、ストライガの寄生率を均一にできるライゾトロン法によりロックウールを詰めたシャーレで栽培したソルガムとストライガの葉の気孔コンダクタンスを調査した。ロックウールの最大含水量の70-100%の含水量を維持した湿潤条件に比べて30-60%に維持した乾燥区では、ソルガムの気孔コンダクタンスが大きく低下したのに対し、ストライガでは低下が小さく、これまでのポット実験の結果を支持する結果が得られた。また、ライゾトロンで栽培したストライガの葉にd6-ABAを処理し、4、8、12時間後にソルガムの葉をサンプリングしてd6-ABAがストライガからソルガムへ輸送されているかどうかを調べた。その結果、いずれのサンプリング時期においても、ソルガムの葉からd6-ABAが検出された。今後、ソルガム葉内のd6-ABA濃度の経時変化を調査する。MS寒天培地で栽培したストライガ独立栄養個体について、異なるポリエチレングリコール(PEG)濃度処理および明・暗処理を行い、ABA濃度を調べた。その結果、ストライガ独立栄養個体でも、ソルガムに寄生したストライガと同程度のABA濃度であることが分かった。PEGによる浸透圧ストレスのABA濃度への影響は認められなかった。また、暗条件下のほうが明条件に比べてABA濃度が高かった。
2: おおむね順調に進展している
これまで屋外のポット実験で確認されていたソルガムとストライガの水ストレスに対する気孔応答の差異が、人工気象器内のライゾトロン法でも確認できた。これにより、ポット実験より均一な環境条件の人工気象器で、ストライガの寄生率およびソルガムとストライガの生育を揃えることのできるライゾトロン法による実験系を確立することができた。また、d6-ABAを用いたトレーサー実験により、4-12時間でストライガからソルガムへABAが転流されていることが確認された。今後は転流されたABAの濃度の経時変化を調査する。ストライガ独立栄養個体のABA濃度に関しては、浸透圧ストレスの強度および明・暗処理期間の影響について、さらに検討が必要である。
ライゾトロン法でソルガムとストライガを栽培し、ストライガの葉にd6-ABA処理を行い、ソルガムの葉でのd6-ABA濃度の経時変化を測定する。また、ライゾトロン法で栽培したソルガムとストライガに湿潤、乾燥、ABA葉面散布処理を行い、気孔コンダクタンスおよび内生ABA濃度の葉位別の調査を行う。ストライガ独立栄養個体については、PEG処理強度および明・暗処理の処理期間が気孔応答とABA濃度へ与える影響について調査する。さらに、寄生関係にあるソルガムとストライガ、およびストライガ独立栄養個体の水耕栽培法の確立に取り組む。
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