研究実績の概要 |
根寄生雑草ストライガは、ソルガムなどに寄生することからアフリカの乾燥地の作物生産に多大な被害を及ぼしている。これまでに、気孔閉鎖に関わるアブシジン酸(ABA)濃度は宿主ソルガムよりもストライガで約10倍も高く、ストライガの寄生によりソルガムで増加することが分かった。ストライガ自身がABAを合成し、宿主へ輸送することにより宿主からの養水分収奪に関わる蒸散流を能動的に制御している可能性がある。 本年度は、ライゾトロン法によりロックウールを詰めたシャーレでストライガとソルガムを栽培し、ストライガの葉にd6-ABA(0, 0.1, 1μmol)を含む50%アセトン水溶液50μlを塗布し、6時間後のソルガムおよびストライガの葉中のd6-ABAを調べた。ストライガに0.1μmol d6-ABAを処理したソルガムの葉から最も高いd6-ABAが検出された。しかし、0μmol d6-ABA処理区のソルガムからもd6-ABAが検出されたことから、本方法ではABAがストライガからソルガムへ輸送されていることを確証することができなかった。そこで、トウモロコシのABA生合成遺伝子欠損変異体(vp14)を用いて、ストライガの接種により変異体のABA濃度が増加し気孔が閉鎖するかどうかを検証した。Maize Genetics Cooperation Stock Centerから分譲された種子から得た個体を自家受粉させ、登熟前に収穫して過湿状態に置き、穂発芽した種子をライゾトロンに移植して育てた。ABA濃度が極めて低く、乾燥条件下でABAが増加せず、気孔が閉じない個体を選抜し、ストライガ発芽種子を接種した。ストライガの寄生によりトウモロコシの気孔は閉鎖したがABA濃度は個体間差異が大きく、ストライガ接種によるソルガムの気孔閉鎖の結果がABA濃度の増加に原因するかどうかは検証できなかった。
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