研究課題
若手研究(B)
本研究の目的は、犬のリンパ腫におけるウイルス感染の関与を検討し、発癌因子としての可能性を明らかにすることである。平成25年度には、犬のリンパ腫症例から採取した腫瘍細胞の培養上清を検体としてRapid determination system for viral nucleic acid sequences (RDV) 法を用いて感染ウイルスの網羅的検出を行った。リンパ腫と診断された14症例から腫瘍細胞を採取し、in vitroで3日間培養後に培養上清を得た。これまでのところ、7症例の検体についてRDV法による解析を行ったが、いずれもウイルス遺伝子断片は検出されなかった。今後も解析検体数を増やし、未知のウイルスも含めた感染ウイルスの検出と同定を目指す。また、Epstein-Barr virus (EBV) ウイルスの感染を検討するため、リンパ腫症例の血漿または血清中の抗EBV抗体をEnzyme-linked immunosorbent assay (ELISA法) を用いて検出した。過去の保存血漿または血清を含む犬のリンパ腫60検体について解析を行い、1検体が陽性と考えられた。この結果から、犬のリンパ腫においてEBVの感染は主要な要因ではないと考えられた。ただし、EBV類似ウイルスの感染については否定できないため、今後はELISA法に加え、分子生物学的手法も用いてEBV関連ウイルスの検出を行う予定である。
4: 遅れている
平成25年度は、腫瘍細胞に感染しているウイルスを網羅的に解析し、感染ウイルスを同定することを目的としていた。しかし、研究の進捗状況は予定より遅延している。理由として、1)症例からの検体数が想定より少なかったこと、2)期間中に所属研究室の異動があり十分な検体数を解析できなかったこと、3)解析した検体にウイルス遺伝子断片が検出されなかったことがあげられる。
平成26年度の実施計画に大きな変更はないが、継続して臨床検体における感染ウイルスの網羅的解析を行うとともに新たに培養細胞株での解析も行うこととする。感染ウイルスの遺伝子が検出された場合には、当初の予定通りに大量シークエンスによるウイルスゲノム解析と症例での感染率を検討する。また、当初の研究計画以外に、ウイルス抗原の特異的検出系を確立するために当該ウイルスに対する特異抗体を作製することとする。また、EBV関連ウイルスについては、抗EBV抗体の検出に加えて遺伝子の検出も行い、検出率の向上を目指す。
年度途中に学部内で所属の異動があったため進捗の遅延および設備を含めた研究環境の変化により残額が生じた。細胞培養および分子生物学的実験に必要な試薬および消耗品費ならびに成果発表費は、当初の研究計画通りに使用する予定である。所属異動に伴う設備環境の変化に対応するため、安全キャビネットの購入を予定している。
すべて 2013
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PLoS ONE
巻: 8(9) ページ: e73555
10.1371/journal.pone.0073555