重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルスのnsp1タンパク質は、宿主mRNAの切断を引き起こすことにより宿主遺伝子発現を阻害するが、そのメカニズムは分かっていない。本研究課題では、nsp1タンパク質依存性RNA切断に関与する分子候補として、宿主mRNA品質管理機構の一つであるナンセンスRNA分解機構において中心的な働きを担っているUPF1タンパク質を同定した。これまで、ウイルスの生存戦略として宿主mRNA品質管理機構が利用されているという報告はなく、本成果はウイルスの病原性発現機構の解明のみならず、細胞生物学分野においても重要な知見となることが考えられる。
|