昨年度までに新たに同定した、3つのSpi-B依存的M細胞特異的発現分子の解析を行った。候補分子1に関しては、コンベンショナルな欠損マウスが入手可能であったため、今年度は欠損マウスのコロニーを広げ、抗原取り込み能に変化があるかどうかを検討した。蛍光標識したマイクロビーズ(直径200 nm)をゾンデで経口投与し、2時間後に十二指腸側のパイエル板内に取り込まれているビーズ数を計測、比較した。計測には連続凍結切片を蛍光顕微鏡下で観察することで行った。その結果、候補遺伝子1の欠損マウスでは野生型に比べ、ビーズの取り込み量が有意に低下していた。このことから、候補分子1はレセプターを介さないM細胞のTranscytosis能に関わっていると予想している。 候補分子2、3に関しては、コンディショナル欠損マウスの作製が終わり、コロニーを広げている最中である。候補分子2のコンベンショナルノックアウトマウスも同時に作製したが、このマウスはメンデルの法則に従って生まれ、生殖能も有しており見た目は正常であった。このマウスにおいてもビーズの取り込み能を比較したが有意な差は認められなかった。現在、サルモネラ菌とエルシニア菌をモデルとして、病原体の取り込み実験を計画している。 また、Marcksl1発現細胞をM細胞として分取し、FAE中のそれ以外の細胞(Marcksl1を発現しない細胞)と遺伝子発現パターンを比較したところ、さらに2つのM細胞特異的発現分子の候補を得た(候補分子4、5)。これらの分子についても、コンディショナルノックアウトマウスの作製を進めている。
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