最終年度はこれまでの文献調査などの成果を踏まえ,ネットリサーチ専門業者の協力を得て「災害時の医薬品の備蓄状況」について7種類の調査を行った。 実施した調査は医師調査(300名:回収率42.2%),薬剤師調査(300名:回収率36.9%),介護職調査(200名:回収率23.8%),高齢化率高エリアの市民調査(300名:回収率25.3%),高齢化率低エリアの市民調査(300名:回収率32.0%),慢性疾患薬服薬市民調査(2型糖尿病,高血圧症,喘息,アトピー性皮膚炎の市民400名:回収率25.6%),向精神薬服薬市民調査(うつ病,不眠症の市民400名:回収率28.8%)の7種類である。 医師調査では,病院で災害用に備蓄すべき医薬品として「強心剤,昇圧剤,抗不整脈剤,狭心症治療剤,降圧剤,気管支拡張剤,解熱剤・鎮痛・総合感冒薬,抗てんかん剤,副腎皮質ステロイド剤,糖尿病治療剤,抗菌剤」が上位であった。また,市民が備蓄すべき医薬品として「降圧剤,整腸止痢剤,解熱剤・鎮痛・総合感冒薬」が上位となっていた。薬剤師調査は医師調査の結果と傾向が似ていたが,市民が備蓄すべき医薬品として「糖尿病治療剤,抗てんかん剤」も上位となっていた。介護職調査では要介護者に慢性疾患等の服薬者が多いという回答が66.0%あったが,施設での備蓄医薬品としては「解熱剤・鎮痛・総合感冒薬」のみをあげる回答が多かった。高齢化率の高低で分けた2つの市民調査では回答に大きな差は見られないが,高齢化率低エリアの市民は身近な2次災害のリスクとして「帰宅難民」の回答が多かった。市民は自ら備蓄しておくべきものとして「解熱剤・鎮痛・総合感冒薬」をあげていた。慢性疾患薬服薬市民調査と向精神薬服薬市民調査の結果,いずれも処方薬を使い切っている者は半数以下であり,30%以上が備蓄していた。 今後,分析を進め,学会報告と論文執筆を行う予定である。
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