研究課題/領域番号 |
25861186
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小川 久貴 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (20621022)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 癌リプログラミング / microRNA / 分化度 |
研究概要 |
ヒトES細胞、iPS細胞との発現レベルの比較、xenograft tumor modelでのanti-CD31抗体(血管内皮細胞)を用いた血管新生の比較検討の結果、HT29がxenograft tumor modelの最適株であり、用いるmicroRNAはmiR302sもしくは302s,369s併用と決定した。Xenograft tumor modelにおいてHT29で作成した皮下腫瘍に対してmiR302sおよびmiR302s,369sを投与した。miR投与群はnegative control miR群、生食投与群と比較して有意差を持って腫瘍増殖の抑制を認めた。組織免疫染色によりKi-67 index低下、TUNEL染色により局所的なapoptosisを認め、特記すべきことにOct3/4,Sox2の発現上昇を認めた。miROct3/4,Sox2の発現上昇はqRT-PCRでも確認した。さらには腺癌組織の分化度を示す指標であるAlcian blue染色による粘液産生の低下、miR302s,369s投与群ではCK20発現の低下を部分的に認めた。HE染色において腺癌組織以外の組織形成は認めなかった(teratoma,teratocarcinomaへのtransformationを認めず)。以上よりin vivoにおいて癌リプログラミングは癌の分化度を変化させ得る、新規癌治療法になりうる可能性を認めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPC cellsの作成にはN-TERA2と同等レベルのmiR302sの発現維持が必要であるとされる。当科で研究開発している炭酸アパタイトは既存のlipofection法と比較して、蛍光ラベルしたsiRNAを用いた解析からより多量のsiRNAをより短時間で取り込ませることができることが分かっている。炭酸アパタイトは従来のtransfection法と比較して細胞毒性が少なくより効率的にmicroRNAのtransfectionが可能である。またin vitroの解析において、DLD-1は3胚葉分化可能な細胞DLD-1-iPC cellsにreprogram可能であったが、iPC cells作成過程でmiR302s,369sの有する様々な効果を認めた。miR302sをある一定のレベルで発現することでHT29,DLD-1は上皮間葉転換(EMT)の抑制、apoptosisの導入のphenotypeを示した。これらは癌の治療の観点から非常に重要な点であり、癌リプログラミングはEMT抑制、apoptosis誘導、iPC cellsへの変化の3つの経路で癌の悪性度の低下を示した。qRT-PCR法、Western blotting法による検討の結果、miR302sはEMTのkey regulatorであるTGF-beta receptor II、apoptosisのkey regulatorであるMcl-1翻訳抑制を、369sはEMTのkey regulatorであるZeb1の翻訳抑制を示すことがわかった。しかしながら癌リプログラミングによる癌悪性度の低下の機序は未だ不明な部分が多いが、注目すべきことに癌遺伝子であるc-mycがmicroRNAによるリプログラミングの過程で低下することがわかった。またin vivoでの解析でmiR投与群はKi67 indexの低下、apoptosisの誘導に加え、分化度の変化を認めた。具体的にはHE染色で元来中分化型腺癌組織を形成するHT29細胞がmiR投与群で腺腔形成の乏しい低分化へshiftしていることがわかった。miR投与群でのH3K4メチル化の亢進を認め、miR投与によりepigeneticsの変化を引き起こした可能性がある。
|
今後の研究の推進方策 |
iPC cellsの作成にはN-TERA2と同等レベルのmiR302sの発現維持が必要であるとされる。当科で研究開発している炭酸アパタイトは既存のlipofection法と比較して、細胞障害性が低く蛍光ラベルしたsiRNAを用いた解析からより多量のsiRNAをより短時間で取り込ませることができることが分かっている。またin vitroの解析において、DLD-1は3胚葉分化可能な細胞DLD-1-iPC cellsにreprogram可能であったが、iPC cells作成過程でmiR302s,369sの有する様々な効果を認めた。miR302sをある一定のレベルで発現することでHT29,DLD-1は上皮間葉転換(EMT)の抑制、apoptosisの導入の癌治療効果を示した。これらは癌の治療の観点から非常に重要な点であり、癌リプログラミングはEMT抑制、apoptosis誘導、iPC cellsへの変化の3つの経路で癌の悪性度の低下を示した。qRT-PCR法、Western blotting法による検討の結果、miR302sはEMTのkey regulatorであるTGF-beta receptor II、apoptosisのkey regulatorであるMcl-1翻訳抑制を、369sはEMTのkey regulatorであるZeb1の翻訳抑制を示すことがわかった(Luciferaseアッセイは未).しかしながら癌リプログラミングによる癌悪性度の低下の機序は未だ不明な部分が多いが、注目すべきことに癌遺伝子であるc-mycがmicroRNAによるリプログラミングの過程で低下することがわかった。またin vivoでの解析でmiR投与群はKi67 indexの低下、apoptosisの誘導に加え、分化度の変化を認めた。具体的にはHE染色で元来中分化型腺癌組織を形成するHT29細胞がmiR投与群で腺腔形成の乏しい低分化へshiftしていること,Alcian blue染色での粘液産生低下、CK20免疫染色の発現の低下である。またこれらの背景にepigeneticsの変化が考えられ、実際H3K4のメチル化は亢進していた。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度に必要な物品を全て購入したため。 来年度に必要な物品を購入するため。
|