研究実績の概要 |
microRNA302,369を用いた大腸癌癌細胞におけるリプログラミングによる新規癌治療法の探索をH25年度に続き、H26年度も継続した。H25年度に得られた実験結果からは、ES細胞、iPS細胞に特異的に高発現しているmicroRNA302,369を大腸癌癌細胞株に導入することでin vitroの実験においてまずは間葉上皮転換が誘導され、ES細胞やiPS細胞のような非常に速いturn overを示す細胞群とは違ってG1arrestを示すslow cell cycleとなり、約1週間のmicroRNA導入期間中にリプログラミングを受けない細胞群はapoptosisをうける、そして続く約3週間のES細胞培地で培養することで異なる分化能を示すES細胞コロニー様細胞に変化することがわかった。これらの実験結果を受け、MET,cell cycle, apoptosisにおける導入microRNAの作用機序の解明をすすめた。METに関してはmicroRNA302および369両者ともにEカドヘリンの発現させ、特にmicroRNAはEMT modulatorの一つであるZeb1の翻訳抑制効果を認めた。Cell cycleにおける検討ではmicroRNA302はG1→S期におけるCDK2の翻訳抑制効果をルシフェラーゼアッセイで確認できた。Apoptosisにおける検討ではmicroRNA302が抗アポトーシスを示すMcl-1の翻訳抑制効果を認めた。以上のin vitroの検討に加え、ディープシークエンスによりmicroRNA302がグローバルな脱メチル化を引き起こすことがわかった。上記のような、MET誘導、slow cell cycle、apoptosis誘導、エピゲノム変化によりin vitroにおける癌悪性度の低下をmicroRNA全身投与によるxenograft tumorモデルでの抗癌治療効果を検討し、microRNA投与群のxenograftsにおいて分化度の変化を認め、増殖抑制効果も見られた。以上よりES細胞、iPS細胞に特異的に高発現しているmicroRNA302および369により、MET誘導、slow cell cycle、apoptosis誘導、エピゲノムの変化を経て、癌悪性度の低下につながることが示された。今研究の内容は現在PLOSONE投稿中である。
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