研究課題
研究目的のうちin vitroにおける、「食道扁平上皮癌細胞株のp-mTORレベルを測定した後に低発現株と高発現株に分類し、mTOR阻害剤処理により細胞浸潤能(invasion assay)、増殖能(proliferation assay)、抗アポトーシス作用(flow cytometory)、抗癌剤感受性などにおいて、両株に差があるかを検討する。」は概ね予定通り進行しており、再現性を確認できた。しかし高発現株(TE4)と低発現株(TE11)においては両株に有意な差はないこと、mTOR阻害剤処理においてp-mTORが発現していることが重要であることが確認できた。in vivoでは食道扁平上皮癌モデルマウスを作製し、mTOR阻害剤投与による抗腫瘍効果を検討している。「腫瘍におけるmTOR signalingの変化を解析し、さらに放射線増強作用、抗癌剤感受性増強作用の有無についても検討を行う。」に関しては、mTOR阻害剤投与により抗腫瘍効果がすでに確認できており、今後も実験系の確立を行う。またcisplatinの感受性増強作用も確認できている。しかし、放射線増感作用に関してはまだ研究進行段階である。2010年、2013年に基本となる論文がpublishされているため、全体的な研究計画の根幹は確立出来ていると考える。「食道扁平上皮癌250例以上」の免疫染色のうち、170例ほどでm-TORと予後との関連はすでにp-mTOR陽性例は有意に予後不良であることが確認している。今後はHedgehog経路においては、転写因子であるGli1の免疫染色を施行し、予後との評価を行い、p-mTOR陽性例との相関、長期予後を検討し、データベースをアップデートしつつ症例数増加を検討したい。
4: 遅れている
Gli1の免疫染色の実験系がなかなか確立せず、現在も再現性を確認している状況である。賦活化の時間、kitの種類、抗体の種類等を替え、試行錯誤している。今後も同様に免疫染色での再現性を確認していく方針である。mTORの免疫染色については、化学療法の投与がなされていない食道癌の症例数が思うように増えず、予定数より少なくなっており、予後解析もあまり思うような差が出ていない。これはstage Iで非切除で化学放射線療法を選択される患者が増加傾向であるからであると考える。今後も症例数を増やすべく、関連病院と連携を取りながら、消化管内視鏡検査を積極的に行い、症例数の確保に努めていく方針である。免疫染色の手技については既報の通り再現性をもって確認できている。放射線効果増強作用においてもなかなか進んでいない状況である。in vitroで確認後に、in vivoへ進む方針であるが、細胞レベルではmTOR阻害剤投与群で放射線増強作用効果があると報告されており、同様の実験系で進めていく方針である。抗癌剤感受性増強作用は我々の既報の論文で確認出来ており、同様の実験系で進めていきたい。食道癌化学療法に用いる抗癌剤(Docetaxel、5-FU、Cisplatin)、mTOR阻害剤とHedgehog阻害剤の同時、もしくは3剤投与に関しては、それぞれ単独での毒性が強く、投与量の調整に難渋しており、相加効果が確認出来る量を設定したいと考える。どちらも過去の報告、既報で抗腫瘍効果が確認できているため、今後も実験系の確立を行っていく方針である。
今後の研究方針として、p-mTORの免疫染色は手技が確立しているため、症例数の増加を図り、p-mTORに関する免疫染色を進めることとする。またGli1に関して、まずは実験系の確立と再現性の確認、また臨床病理学的因子との解析のためのデータベース整理が早急な課題である。予後検討については現段階において有意差が出ているため、症例数を確実に増やし、詳細な検討を行いたいと考える。また食道癌化学療法に用いる抗癌剤(Docetaxel、5-FU、Cisplatin)とmTOR阻害剤の相互作用、またhedgehog阻害剤との相互作用の確認後に放射線照射につき検討を行う。まずはin vitroでの確認を行うが、それぞれ単剤での細胞毒性が強く、上乗せ効果を検討するために投与量を慎重に決定する必要がある。さらに放射線照射量についても同様で、上乗せ効果を詳細に検討したい。in vitro、in vivo両方でのプロトコルの詳細な検討が必要で、複雑な手技と詳細な検討が必要となる。in vivoにおいては食道扁平上皮癌モデルマウスの作成に関しては既報にもある通り、再現性を持って作成出来る。in vitroの実験系の後に、Docetaxel、5-FU、hedgehog阻害剤の同時投与、もしくは3剤投与の系を確認し、抗腫瘍効果について投与実験を行う方針である。
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