研究概要 |
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)は、脳動脈瘤を高率に(約10%)合併する遺伝性疾患である。単一遺伝性疾患の中では最も頻度が高く(400人-1000人に1人)、既にPKD1遺伝子(16p13.3)とPKD2遺伝子(4q21) 2つの原因遺伝子が同定され、有力な脳動脈瘤候補遺伝子と考えられている。 本年度は遺伝的背景が濃厚な家族性脳動脈瘤患者93例を対象にIon PGMシーケンサー(Life Technologies社)を用いてPKD1遺伝子とPKD2遺伝子のエクソン領域のターゲットリシーケンスを行った。得られたデータの平均カバレッジは120であった。VariantCaller v4.0(LifeTechnologies)を用いてバリアントを抽出したところ、PKD1遺伝子では、1塩基置換(single nucleotide variant, SNV)が374個、Indelが92個、PKD2遺伝子ではSNVが215個、Indelが8個が抽出された。このうちコーディング領域以外のもの、公共データベースに登録されている多形を除外した。また抽出されたバリアントはサンガー法によるシーケンスにより確認作業をおこなった。wANNOVA(http://wannovar.usc.edu/)を用いて機能推定を行い、機能的に意味のある変異を抽出するとPKD1遺伝子では8個,PKD2遺伝子では4個のバリアントが抽出できた。脳動脈瘤患者群の中にもPKD遺伝子変異キャリアが潜んでいるのではないかという当初の仮説に矛盾しない結果がえられた。現在、家系内でのバリアントの検証、またコントロールサンプルとの比較検証を進めているところである。
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