研究実績の概要 |
本年度は、昨年に引き続き遺伝背景が濃厚な家族性脳動脈瘤患者55例を追加し、Ion PGMシーケンサー( Life Technologies 社) を用いてPKD1遺伝子とPKD2遺伝子のエクソン領域のターゲットリシーケンスを行った。日本人特有のrare variant を抽出するために、国際1000 人ゲノムプロジェクト (http://browser.1000genomes.org/i-ndex.html) にある日本人89人のデータより頻度1%以下のrare variantsを抽出した。次に、コンピューターによる変異機能解析を行うため、wANNOVAR (http://wannovar.usc.edu/) を用いて、変異機能解析ツールであるCADD (http://cadd.gs.washington.edu/home) によるスコアリングを行いC-scoreが10点以上のvariantsを抽出した。また得られたvariantsが、人種特異的な遺伝多形であることを否定するため、我々が保有している非脳動脈瘤患者96例を用いて上記variantsのサンガーシーケンス法を行い、日本人特有のvariantsであることを確認した。結果、家族性脳動脈瘤148人を検討し、12箇所、19人(12.8%)にrare variants(PKD1: 14人, PKD2: 5人)を認めた。このうち、公共のデータベースにない新規変異を6人で認めた。特にPKD1 遺伝子の細胞外ドメインに多数集積する傾向も認められ、多発性嚢胞腎が発症せず脳動脈瘤を発症した背景のひとつとも考えられる。PKD1遺伝子とPKD2遺伝子は脳動脈瘤の有力な疾患感受性遺伝子と考えられ、今後この研究成果を論文で発表する予定である。
|