本研究は、発声運動を調節する中枢神経機構の一端を形態学的立場から明らかにすることを目的とし、中心灰白質から延髄網様体を経て内喉頭筋を支配する疑核運動ニューロンへ至る神経路の存在様式を、順行性および逆行性標識法を利用して解析した。その結果、疑核後核の軸索終末の分布領域と、輪状甲状筋を支配するニューロンの分布領域の一致を疑核吻側部において認めた。さらにこの領域を電子顕微鏡下で解析した結果、両者の間に非対称性シナプスが形成されることを確認した。過去の報告と併せて考えると、中心灰白質から疑核後核を経て内喉頭筋支配運動ニューロンへ至る興奮性神経路が発声の調節に関わることが示唆される。
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