研究課題
若手研究(B)
骨膜伸展による安定した骨形成の検討のため、家兎を使用して実験的研究を行っている。骨膜伸展による骨形成は、過度の伸展による創し開、死腔の形成、感染の可能性があり、伸展方法についての検討が必要とされている。本研究においては持続的な弱い伸展力を発揮する装置を構想し、新生骨の形成を観察した。また装置は、臨床応用が可能で、簡便なものを確立するために、既存の材料を用いた。具体的には生体吸収性メッシュと形状記憶合金(矯正用Ni-Ti ワイヤー)、顎間固定用スクリューを用いて家兎頭蓋骨骨膜に自発的持続的伸展力を作用させ、骨形成の状態を検討した。1週の待機期間の後骨膜を持続的に伸展するもの(伸展群)と伸展しないもの(対照群)に分け、伸展後1,2,4,8 週(術後2,3,5,9 週)で、対照群は術後2,3,5,9 週で屠殺。非脱灰研磨標本を作製し、組織形態学的評価(H-E 染色にて骨膜伸展量(mm)および新生骨面積(mm2)を計測)、免疫組織化学的評価(抗BMP-2 抗体陽性細胞数)し、計測結果を統計処理し比較検討した。新生骨面積は3,5,9週において伸展群、対照群間に有意差を認めた。抗BMP-2 抗体陽性細胞数に関しても5,9週において両群間に有意差をみとめた。また伸展群において2週と比較して3週で有意に多くみられた。これらの結果より既存の材料を用いた伸展装置の有用性が示唆されたといえる。骨膜伸展による骨形成は従来の骨造成法に比較して、骨移植を必要としない、それに伴い骨採取部位の外科的侵襲が回避できる、骨形成(Osteogenesis)による骨再生を用いているので骨誘導(Osteoinduction)や骨伝導(Osteoconduction)による骨再生に比較して骨再生が速やかに起こる、軟組織の伸展が可能となる、生体材料はやがて自家骨に置換される、など様々な利点を有している。
2: おおむね順調に進展している
家兎を用いて骨膜伸展の詳細を観察、検討している。おおむね計画通りに進展しており、伸展群、対照群間に新生骨の面積において有意差がみとめられ、本研究の伸展装置の有用性が示唆されている。
本研究では伸展力、伸展スピードについては全群統一とし比較検討は行わなかった。今後、伸展力、伸展スピードの比較検討を行い、より適当な伸展装置および伸展方法の検討、確立を進めていく。
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