糖尿病や肥満が、歯周病の悪化に影響を及ぼし得ることは、多くの疫学的調査ならびに動物実験によって示されているが、その詳細なメカニズムは未だ明らかにはされていない。 歯周組織も、糖尿合併症として血管障害がみられる臓器と同様に、糖尿病や肥満によるインスリン抵抗性の発現と、それに伴う血管内皮機能不全が起きていると考えられる。さらに、炎症時には組織破壊が促される可能性も考えられる。そこで、本研究では、歯周組織におけるインスリンシグナリングと、インスリン抵抗性が歯周炎の進行に及ぼす影響について検索する。 申請者はその説明のひとつとして、他の糖尿合併症を発症する臓器と同じく、歯周組織も血管を豊富に有するため、インスリン抵抗性の発現を介した血管内皮機能不全が、糖尿病と歯周組織破壊の進行を結び付けうると考えた。そこでインスリン抵抗モデル動物(Zucker 肥満ラット)の歯肉でのインスリンシグナルの解析を行い、血管内皮型の一酸化窒素合成酵素(eNOS)の発現量の低下と、Akt-eNOS経路が阻害されるインスリン抵抗の発現を示した。さらに詳細に検索することで、プロテインキナーゼC(PKC)活性や酸化ストレスにより血管内皮細胞で生じている潜在的な炎症状態に起因している可能性を報告した。
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