研究課題/領域番号 |
25870124
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
大朝 由美子 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (10397820)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 星惑星形成 / 褐色矮星 / 惑星質量天体 / 系外惑星 / 光赤外線天文学 |
研究実績の概要 |
太陽以外の恒星を周回する惑星系(太陽系外惑星)には、歪な軌道やごく近い軌道を回る巨大ガス惑星や氷惑星など様々な種類があるが、なかでも親星となる恒星を持たずに単独で存在する「単独惑星質量天体(浮遊惑星)」は、系外惑星の多様性を解明する一つの鍵となり、その理解は重要である。しかし、光度が非常に小さく詳細な観測例が少ないために、未解明な点が多い。本研究の目的は、惑星質量天体の物理量や存在頻度、形成過程について、大型望遠鏡を用いた光赤外測光/分光探査観測から明らかにすることである。
(1)銀河面付近にあり、太陽の約20倍重い大質量星が形成されるはくちょう座分子雲について、深い近赤外測光探査観測、及び、データ解析を行った。申請者らが以前に褐色矮星・惑星質量天体を発見している領域に加えて、より低密度分子ガス領域の観測を行い、新たに数百の褐色矮星・惑星質量天体候補が同定された。電波観測結果との比較から、ガス/ダストの比較的密度の高い場所に褐色矮星が存在するのに対し、惑星質量天体は分子ガス密度によらず一様に存在していること、低質量ほど数が多くなるが、その増加傾向は同一分子雲中でも場所によって異なる傾向が見られた。 (2)銀緯が高い場所に位置する高銀緯分子雲について、可視分光探査観測、及びデータ解析を行った。高銀緯分子雲は分子ガス・ダストの密度が低く、多くが星形成が行われていない星なし分子雲であると考えられている。現在までに3つの分子雲領域(計約4500平方分)について観測/データ解析を進め、それぞれ数個のTタウリ型星候補を同定した。スペクトル型と光度を求め、質量を導出した結果、若い超低質量天体と考えられる天体が存在した。
これらの研究成果は、日本天文学会や国際・国内会議などにおいて発表するとともに、学内外における講義や講演会、科学教室、雑誌記事などを通じて、研究成果の情報発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題は、多波長観測による惑星質量天体の観測であり、銀河面付近にある近傍星形成領域を対象とした近赤外測光観測探査のデータ解析はおおむね進みつつある。
他方、銀河面から離れた低密度分子雲については、ハワイ大学2.2m望遠鏡を用いた、より広範囲の可視分光探査観測を計画していたが、H27年度は共同利用公募プログラムの募集がなかったため、新規及び補填観測が申請できなかった。 そのため、現在までの進捗状況は、やや遅れていると自己評価する。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度は、環境の違いによる星形成に焦点を絞り、銀河面付近の活発な星形成が見られる領域や、銀緯が高く星形成がほぼ起きていないと考えられている低密度分子雲領域について、惑星質量天体/褐色矮星などの超低質量天体の測光/分光探査観測、及びデータ解析を進める。特に、高銀緯分子雲においては、今年度までに超低質量天体候補が見つかっているので、詳細なデータ解析やフォローアップ観測による検証を進める予定である。 加えて、広範囲にわたる可視分光探査観測を計画しているが、本観測に最適なハワイ大学望遠鏡及び広視野スリットレス分光観測装置が、現在のところ、次年度共同利用公募プログラムの募集について不透明な状況であるため、別の観測手法も検討しながら進めたい。
また、最終年度となるため、これまでの観測結果と比較考察し、超低質量天体の統計的性質を調べて、質量関数や空間分布の環境による差異からその形成過程や頻度を探る。 さらに、これらの研究成果について学会や論文などでを行なうとともに、各種講演や学内外の講義、雑誌記事やホームページなどを通じて、一般市民を対象とした研究成果の情報発信も積極的に推進していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカ・ハワイ島マウナケア山にあるハワイ大学2.2m望遠鏡及び広視野スリットレス多天体分光装置を用いた低密度分子雲の分光探査観測を予定していたが、望遠鏡の不具合により一部観測が実施されなかった。加えてH27年度は、共同利用公募プロポーザルが申請できない状況であり、観測を一部進めることができなかった。 また、参加予定の国際会議が、大学入試関係の校務と重なったため出席することができなかった。 以上の理由により、繰越金が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越金については、次年度の研究費とあわせて、共同利用観測に赴くため、及び、研究成果を発表するために国際会議に参加する旅費に充当する予定である。 加えて、データ解析を行うための計算機やバックアップ環境、国内で相補的な観測を行うための装置物品購入を予定している。
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